第3話 TOP6の一人、天使の秘密

「おっす!遥斗先輩!

相変わらずのハーレム登校お疲れ様っす!!

柊もおはよー!」

「おはよう」

「むぅ」


野球部後輩の大翔がテンション高く手を振る。

俺は軽く手を上げ、応えた。

歌恋はムスッとする。


「行こ、遥斗」

「構うな、ばーか」

「か、可愛い!」


歌恋は俺の手を引っ張り、大翔からフンと視線を逸らすと振り向き様にあっかんべーをする。

歌恋は大翔のことが大嫌い。

理由は入学してからずっと構って来るから。

困ったことに歌恋はかまちょだが構われるのは好きじゃないのだ。

大翔はそんなこととは露知らず、毎朝ハートを撃ち抜かれているがな。


「待ってよ、遥くん」

「麗蘭ちゃんおはよー!」


麗蘭が追いかけようと声をかけると同クラの清水が抱きつく。


「おはよう、はるはる」

「こっち来て話そ〜」


女子のグループを指差す清水。


「遥くんごめん〜」

「また教室でな。」

「うん!」


麗蘭は苦笑いで手を合わせる。

俺は笑顔で返した。

二年のスクールカーストトップに君臨し続ける麗蘭は男女問わず学園の人気者だ

呼び名は海城のトップアイドル。

天真爛漫な性格と笑顔が多いことから名付けられた。

麗蘭は満面の笑みを浮かべる。

とても可愛いらしい素敵な笑顔だ。

もし、彼女になったら毎日楽しそうだな。


「柊、椎名と登校出来てご機嫌だな。

調子はどうだ?」

「あ、監督!

絶好調であります!」


歌恋に左腕に抱きつかれながら下駄箱に着くと女子野球部監督の氷室麗央が腕を組みながら下駄箱に寄りかかって、飴を咥えていた。

歌恋は満面の笑みで敬礼する。


「そうか、椎名、コーチ要請受けてくれたんだろ?」

「えぇ」

「ありがとう、ようこそ我が女子野球部へ。」


氷室は歌恋に対し、微笑み、直ぐに俺に握手を求める。


「どうした?」


尻込みしていると氷室は驚く。

俺は考えていた。

この握手は地獄への入り口なのではないかと。


「なんだ、まだスカウトした時のこと覚えてるのか?」

「忘れる訳ないでしょ」


忘れる訳がない。

否、忘れられる訳がないのだ。


「なんかあったの?」


首を傾げる歌恋。


「教えてやろうか?」

「やめろ」


ニヤつく氷室。

俺は頬を赤く染める。

中2の自分を思い出しながら。


「エロいこと?」


じっと見つめる歌恋。

癪だが的をいている。


「正解だ、柊。

こいつ、相当おっぱい好きなんだろうな。

アタシのたわわに実った95のおっぱいを揉ませてやるって言ったら簡単にお願いします!って頭下げたんだ。

いやー、あれは傑作だった。」


下品に笑う氷室。

あの日はかなり気温が高かった。

そんな日に美人の巨乳を見たら誰だってサインしてしまうだろう。

ったく、この女狐は何人この方法で騙してるんだか。


「やっぱり、おっぱい!おっぱい好きなんだね!遥斗!

だから、風夏先輩に靡かないんだ!」

「九条とは随分仲が良いもんな。やっぱり女は胸か?

触ってみるか?」


ド失礼な事を大声で叫ぶ歌恋とニヤつき、巨乳を持ち揺らす氷室。

俺は唾を飲む。

ーー揉みてぇ!揉みてぇよ!


「わ、私だって!私だって!まだ可能性あるんだからね、遥斗!!

成長期がまだ来てないだけだから!」


抱きつき涙目と涙声で二人に近づかせないように踏ん張る風夏。

男子の視線が俺に向く。


「氷室監督、行きましょう」

「あぁ」


俺は頬を赤く染めたまま、手を出した。

氷室はニヤつき、ギュッと握り返す。

俺達は女子野球部の寮へ。


「最初の仕事だ、椎名。

ここにいるぐーたらを起こして、登校させろ。

一人でな。

アタシと柊、一之瀬は話があるから。

ほら行くぞ柊、一之瀬」

「はーい」

「?」


少し歩き、417号室に案内されると氷室は歌恋と風夏を連れて、早足で来た道を戻る。


「ぐーたらって誰だよ」

「鍵かかってない、不用心だな。」


俺はドアノブに手をかける。

いくらぐーたらでももうすぐ登校時間だ。

とっくに教室だろう。


「嘘だろ!?」


ドアを開けると部屋は泥棒に入られたように散らかっていた。

俺は思わずドアを閉める。


「今のは幻覚だ。こんな散らかってる部屋に住んでるやつなんていない」

「oh...」


ドアに寄りかかりながらもう一度決意し、ドアを開けた。

現実は変わらなかった。


「なぜ酒が」


まさか未成年飲酒をしているようなヤバい奴なんだろうか。


「タバコまで、ヤンキーなのか?」


青いパッケージのタバコが何個か置いてある。


「スーツ?

って、アイツの部屋じゃねぇか!ここ!」


俺は思い切り、タバコを地面に叩きつけた。

ここは氷室の部屋だ。

あの女狐、俺に部屋の掃除を頼みやがった。

ーーあのクソ巨乳、マジで殺してぇ。


「麗央さん、もうあしゃ?」


聞き覚えのある声が聞こえる。

この声はTOP6の一人、浅倉ましろの声だ。


「浅倉?」

「あ、しいなせんぱいだ、おは〜」


手を振る浅倉。

俺は視線を外す。

なんで全裸なんだ、こいつ。


「服を着ろ」

「どこにあんの?」

「は?」


何言ってんだこいつは服のある場所なんて誰でも3歳児でも知ってるだろ。


「いつも麗央さんが全部やってくれるから」

「頭痛くなってきた。」


あの女狐、俺にコーチを頼んだのはこのぐーたら娘から逃れるためだな。

俺は頭を抱え、タバコが置かれているテーブルを叩いた


「お、おしっこ!

早く服ちょうだい!も、漏れちゃう〜」

「これでも巻いて行け!」


この部屋にトイレはない。

股間を抑える浅倉に俺は吹っ飛んでいた毛布を投げた。


「いや!」

「避けんな!」

「はやく、出ちゃいそう...」


避けた浅倉はしゃがみ、震える。


「あった、はい!」


どっちのものかはわからないがブラとショーツが落ちていた。

俺は渡す。


「これ、私のじゃない〜、麗央さんの〜」

「いいから!漏らした方がやばいわ!」

「うん!そうだね!」


浅倉は急いで履く。

普通なら最高のシーンだが全く嬉しくない。


「上着!」

「毛布で良いだろ!」


俺は毛布を再び投げた。


「せんぱい」

「なんだ」


毛布を羽織り、目を輝かせる浅倉。

俺は睨む。


「せんぱいは天才だ!」

「はよ、行け...」


なんの天才だ。

俺はドアを指差し、頭を抱えた。


「了解であります!」


浅倉は走って出て行った。


「服、ちゃんと着させろよ、女の子だぞ」

「浅倉っていつもはちゃんとしてるよな!」


開けっぱなしのドアに寄りかかる氷室。

俺はタバコを思い切り投げた。


「あぁ、私生活、特に準備が全く出来ないだけでちゃんとしている。

だからTOP6に名を連ねている。」


だが、氷室は最も簡単にキャッチし、ポケットからライターを出し、火をつけた。

悔しい、顔面に当てたかった。


「アンタ、俺に丸投げする気だろ」

「正解、やるな、椎名。」


タバコをふかす氷室はニヤける。


「ふざけんな、こんなのコーチの仕事じゃねぇだろ」


俺は氷室の胸ぐらを掴む。

目上の人間だが今日の。

否、日頃から態度が気に食わない。


「仕事だよ、知ってるだろ?」

「野球が出来ればそれでいいのかよ」


胸ぐらを掴まれながらも冷静に返す氷室。

俺は教えられて来た。

野球人である前に人としての礼節を弁えろと。


「この世界は才能だからな。

浅倉ほどの才能を私生活がヤバいだけで埋もれさせたら野球界の損失だ。

世間様は才能を見たがってる、甲子園が盛り上がるのもプロが盛り上がるのも才能が暴れ回るからだ。

椎名、浅倉に私生活を教えろ。

それがお前の仕事だ。」


氷室の言っていることは間違いじゃない。

人は才能に惹かれ、夢を見る。

俺は夢を見られる側の人間だったが、俺に夢を見る人たちの期待は常に裏切らないようにしてきた。

裏切れば、俺に夢を見た人の夢は終わるからだ。

ある人が言っていた。

夢を見られる側の人間は常に期待に応え続けろ、応え続けた先に輝かしい未来が待っていると。


「そうだな」

「頑張れよ」


俺は氷室の胸ぐらから手を離し、唇を噛み締める。

氷室は笑う。


「せんぱーい、間に合ったよ〜、いや〜もうちょっとで漏れちゃうとこだった。」

「おー、浅倉。よく漏らさなかったな。

偉いぞ〜、喜べ、この椎名がこれからお前に私生活を教えてくれる」


浅倉が帰ってきた。

氷室はタバコを携帯灰皿に捨て、頭を撫でる。


「ありがとせんぱい!これからよろしくね!」


ウインクする浅倉。

ブラはどうしたんだ、ブラは。


「服は着られるのか?」

「うん、出してくれれば」


浅倉は微笑み、汚い床に座る。


「監督、教えてください」

「あぁ。

それと浅倉、それはアタシのだ、はよ脱げ」

「はーい」


俺が頭を抱え、氷室に頼むと氷室はニヤけ、浅倉のショーツを指差す。

浅倉はショーツに手をかける。


「男がいるんだぞ、脱ぐな!」

「何を今更、さっきみたろ」

「アンタなぁ」


そういう問題ではないだろ、そういう問題では。


「可愛い教え子だ、可愛がってくれよ」

「うるせぇ」


俺は氷室から視線を逸らした。

明日から不登校になりたい気分だ。


「麗央さん、今日緑がいいー」

「わかった、可愛いのな」

「うん!」


全裸の浅倉は氷室に着いていく。

こんなのがTOP6でいいのか。


「教室行って来る、午後また教えてくれ」

「あぁ」

「浅倉ましろ、あんな奴だったのか、何が天使だ、ただのぐーたらじゃねぇか...」


俺は外に出て、壁に寄りかかる。

人は見かけによらないというが見かけによらないにも程と言うものがある。


────────────────────


浅倉ましろ

1.誕生日、星座、血液型、出身地

10月25日生まれ、さそり座 B型、東京

2.クラス

1ー3

3.性格、容姿

本当はマイペースすぎるぐーたらだが麗央と遥斗が準備してくれるおかげで学校ではちゃんと出来ているため、天使と呼ばれ、TOP6の一角を担っている。

特徴的なのは何も手入れしていないのに何故か美しい薄く綺麗な赤のロングヘア。

4.身長体重

164cm、54kg

スリーサイズ

85/63/88

5.部活

女子野球部 

投打

左投左打

ポジション

投手

6.趣味

昼寝、遥斗のお世話、お絵描き

7.好きなもの

遥斗、布団

8.嫌いなもの

準備


氷室麗央

1.年齢

25歳

2.身長体重

170cm、60キロ

3.スリーサイズ

95/65/90

4.性格

男勝りな性格で人を特に遥斗をおちょくるのが大好き。

女子にはめちゃくちゃ優しい。

5.特徴

常に飴かタバコを咥えている。

ヘアスタイルは金色のロングヘア。

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