第2話 最強の先輩
「スイーツ祭りだって!どれもめっちゃ美味しそう〜」
「あんなはしゃいじゃって可愛いね、遥くん」
「女子はスイーツに目がないってよく聞くけど、なぁ」
一番近いコンビニに着くと一目散に駆けて行く歌恋。
そんな純真無垢な姿を見た俺と麗蘭はクスッと笑う。
「今週は遥斗の番ね」
「あぁ」
風夏は漫画好きで毎週水曜発売の週刊誌を俺と交互に欠かさず買っている。
安価な週刊誌でもお小遣いが限られる高校生にとっては毎週となれば安くないため風夏とのこの関係はずっと続けて行きたい。
「この付録、私、欲しい」
「俺も」
今週号は俺と風夏が好きな漫画の付録が付いてくるちょっと豪華な仕様。
俺と風夏は1冊ずつ手に取る。
「その雑誌そんな面白いの?」
「麗蘭ちゃん、是非読むべきだよ!
私のおすすめはね、これ!レッドダンク!
バスケで世界一を目指す漫画なの!」
もしかしたら買ってくれるかも、そしたら付録を貰ってなんて考えてそうな目を輝かせる風夏は麗蘭に顔を近づけ、早口で説明する。
風夏は少し、否、かなりオタク気質だ。
「他には?」
スポーツ漫画に興味がない麗蘭は少し距離を取り、嫌そうな表情を向ける。
麗蘭は俺以外に近くに寄られるのが嫌いではないが少し苦手だ。
「こんなのもあるぞ」
俺は麗蘭が好きそうな魔法を駆使して戦う漫画を見せた。
ちなみにこの作品は先週始まったばかりの新連載だ。
「あ、これいいかも。」
麗蘭は興味を持ち、手を出す。
「買えば?」
「三人で読もっか」
「うん!」
俺に続いて、風夏が微笑むと麗蘭は満面の笑みで元気よく返す。
俺たちはカゴに2冊いれた。
「仲睦まじい光景ね、風夏」
俺たちを見てエレガントに微笑む相良梨依奈。
相良先輩はテニス部主将にして、生徒会長。
そして、海城の女神と呼ばれるほどの美貌を持ち合わせており、その美しさは芸能人を軽く凌ぐほどに洗練され、すれ違う人を虜にする。
当然TOP6の頂点に君臨している。
「相良先輩!おはようございます!」
「おはよう」
流石はバリバリの体育会系。
風夏は深々と90度の礼をした。
前から思っていたがこの二人にはどんな関係があるんだろうか。
「椎名くん、九条さんもおはよう」
「おはようございます」
俺たちは会釈程度。
相良先輩は微笑み返す。
「遥斗〜、男の子でしょ〜、カゴ持ってよ〜」
相良先輩が微笑み返した瞬間、歌恋が走って来た。
重いだろうなと思えるほどカゴに物は入っていない。
完全に俺に持たせる魂胆だ。
俺は視線を外す。
「わぉ!生徒会長もコンビニなんて来るんですね!」
俺が視線を外すと歌恋の興味は目の前にいる相良先輩へ。
歌恋は驚き、カゴを落とす。
「相変わらず元気ね、柊さん、おはよう」
「おはようございます!」
クスッと笑う相良先輩。
歌恋は微笑み、カゴを手に取る。
「そうね、コンビニに来たのは久しぶりなの。」
「そうなんですね!」
外には相良家に仕えているであろう執事の方がいる。
相良先輩は相良グループという日本有数の大企業の取締役相良貢氏の一人娘だ。
相良グループの総資産は2兆円を超えるらしい。
本当にこの人は天から何個も与えられた人だな。
「普段はデパートで買うんだけれど、スイーツフェアをやっているらしいから気になってね。
柊さんはプリンが好きなの?」
「はい!今日は遥斗が奢ってくれるらしいので!
遥斗の分は私が買ってあげようかなと。」
相良先輩に良いように見られようとする歌恋。
ーーこの野郎
「あら、良い関係ね。
そのプリン、私も買うわ。
どこにあるの?」
「あっちです!」
歌恋と先輩はスイーツコーナーへ。
「相良先輩と風夏ってどんな関係なの?」
「小学校の時、私と先輩、野球やってたの。その時の名残。
前まではあんなんじゃなかったんだけどほら、ウチのバスケ部とテニス部、上下関係やばいからさ。」
「あはは...」
麗蘭に問われると風夏は苦笑いで答える。
俺のいる野球部と麗蘭のいる女子野球部は名門海城の部活動にしては珍しく上下関係が緩々だが名門海城の部活動は基本的に上下関係が厳しい。
あんなにおおらかで優しい相良先輩率いるテニス部もそれは例外ではない。
「だからさ、労わって遥斗」
「いつも偉いな、風夏、今日も頑張れ」
俺の腕をギュッと抱きしめる風夏。
俺は頭をポンポンしてやる。
ちなみに俺たちはオフだがバスケ部は朝練がないだけだ。
「私も!」
「麗蘭も疲れてるのか?」
胸に飛び込み、ギュッと抱きしめて来る麗蘭。
俺は片腕で受け止める。
「うん、歌恋の世話で」
「すまん、俺の幼馴染が」
本当に歌恋は人に迷惑をかけるやつだ。
俺は麗蘭の頭をヨシヨシする。
麗蘭は気持ちよさそうに微笑む。
「あのさ、歌恋の世話役としてコーチしてもらえないかな?
ほら、うちの部コーチが入院しちゃったでしょ。
監督だけじゃ厳しいみたいでさ。」
「いや、俺コーチ経験とかないし」
突然の提案を俺は拒否した、
いくら幽霊部員でも中学No.1投手という肩書きのおかげで学費などは諸々払わなくていい契約を結んでいる以上、そう簡単に移籍は出来ない。
「実は私が今日遥くんの家に行ったのは監督から遥くんにコーチ要請をしてこいって言われたからなの!」
女子野球部の監督は野球部監督の娘。
なら、契約通り行けるのか...?
「契約のことなんか言ってた?」
麗蘭が聞いているかは知らないがとりあえず聞いてみよう。
「特待のこと?」
「うん」
「それなら監督さんが遊んでるならやるって言ったみたい。」
あのジジイ、俺に何の相談もなしで決めやがったな。
あとで覚えとけよ。
「やる」
俺は満面の笑みで返し、了承した。
俺としても最近身体が鈍ってきていたし、良い機会だ。
選手がダメでも指導者として一流なら認められるからな。
「やった、ありがとう!」
「どういたしまして」
俺と麗蘭はグータッチを交わす。
去年の九月に諦めた野球だがこうなる運命だったのかもしれないな。
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「野球に復帰、良いじゃない、私ももう一度やろうかしら。
椎名くんと一緒なら冷めた熱もまた燃え上がるかもしれないしね」
私はスイーツに夢中の柊さんから視線を外し、グータッチする椎名くんと九条さんを見る。
ーー私はキミに夢中なの。
全国制覇の栄光より欲しいのはキミよ、椎名くん
相良梨依奈
1.誕生日、星座、血液型、出身
7月20日生まれ、かに座、A型、東京
2.クラス
3ー1
3.性格
いつも笑顔でおおらかなムードを漂わせており、人から嫌われることがない完璧な女神にして、生徒会長。
容姿
綺麗な銀色のロングヘアが特徴でとても高校生とは思えない大人っぽい妖艶な顔立ちをしている。
4.身長体重
173cm、68kg
92/67/90
5.部活
テニス部(主将)
6.趣味
スポーツ全般、買い物、椎名くん観察
7.好きなもの
椎名くん
嫌いなもの
野蛮な人
8.好きな動物
猫
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