空気の刑
夏伐
仕返し
私の学校にもスクールカーストというものがある。
誰が下で誰が上に位置するのか、それは皆の雰囲気で決まる。
誰よりも下にされてしまった人は悲惨だ。
無視はあたりまえ、目が合うと笑われる。少しでもポカをすると噂話として学校中に出回る。そんなことが毎日毎日続く。
被害妄想ではない。それですでに何人も不登校になった。
「空気が読めない」人がよく標的になる。
私は自分がいつ、皆の下になっても変わらないと思っていた。
だがいざ順番が来ると、学校ではいつどこでも何をしてもヒソヒソ言われ、家でも視線を感じたり声が聞こえたりするようになってしまった。
家ではそんな声がないと分かっているのに収まらない。
その時、不登校になった子の気持ちが少しわかった。
「ねぇ、元気ないね」
だから最近は標的になった子に話しかけることにしている。
彼女ら、もしくは彼らは卒業時には笑顔で私のことを親友といって去っていく。代わり、と言っていいのか怪しいが、カーストの上位になる人間は卒業する一か月前にはいつも学校に来なくなる。
私のおかげで。
私は自分で思うほど強くなかった。
無視されて、最後に話しかけられた。
「飛び降りろよ」
クラスの全員が私に向かって笑いながら言った。笑顔に押されるようにして、ベランダの手すりに足をかける。いやとは言えない空気だった。
二階とはいえ足がすくんでしまって動けない。……そこを誰かに押された。
問題にはならなかったようだ。
でも地縛霊? そういうものになってしまって。
それからは自分と同じ境遇の子に話しかけることにしてる。
「一人じゃないよ、大丈夫だよ」
その子たちが「空気」に負けず、夢への一歩を踏み出す姿を見るととてもうれしい。でも、その子たちを虐げる人間を見るとどうしても思い出してしまう。
突き落とされた瞬間の記憶を。だから私と同じ目にあってもらっている。
頭では駄目な事だと理解してる。でも心では納得できない。
どうしようもないのでスカッとするまで続けることに決めてる。前向きに、私はもう自由なのだから。
空気の刑 夏伐 @brs83875an
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます