第6話

 □■□



 <通学路>


 岩成くんと恵美との喧嘩の翌日、恵美に変化が見え始めた。


「千尋ー」


 腕に抱き着いてくる恵美。


「は、離れて。歩きづらいから」


「嫌だ。もう離れたくない」


 グッと抱き着いている力が強くなる。今日は朝からずっとこんな感じで離れてくれない。離れようとしてもすぐに見つかってしまう。


「……千尋のこと大好きなの。だからずっと一緒に居たい、離れたくないの」


 恵美が抱き着きながら猫のみたいに僕の胸に顔を擦り寄せてくる。


「俊……岩成に襲われているところ助けてくれた時さ、すっごく嬉しかった」


 昨日の出来事を笑顔で話す恵美。


「ねえその指輪……捨てて? あとお弁当ももう貰わないで。私が作ってくるから。千尋の大好きなものいっぱい入れてあげる。なんだったら私が食べさせてあげるね!」


「ちょ、ちょっと落ち着こう恵美」


 僕が何か言う前に決定しようとしている。いつもの恵美よりとても興奮しているように見える。


「千尋が私以外の女と関わりを持ってることにさ……なんか耐えられなくなっちゃった。前からずっと嫉妬してただよ。今はその指輪見るだけで胸がざわざわするの」


 指輪を見る恵美の目から激しい嫌悪感が伝わってくる。


「私がその指輪よりもっと良いの買ってきてあげるから。あっそうだ、お揃いの買って付けよっか!」


「えっと……この指輪は大切な友達からもらったから、捨てるのはちょっと……。ゆ、指輪も買わなくて大丈夫だからね」


「……そっか。でも指輪はお揃いの絶対に買うよ、私がお金出すから大丈夫。だって私は千尋の彼女だからこれくらい当然だよ。むしろ今までは愛が足りなかったくらい。本当に私ってバカだな。


 私にできることがあったら何でも言って。お金も全部あげるし体も好きなところ触っていいし、触るだけで満足できなかったらいつだってシてあげるからね」






「ごめんね。もう千尋しか見ないからね。大好きだよ千尋」


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