第2話
■
<通学路>
下屋敷さんの家で話し合いをした次の日の朝、一人で登校していると背中を誰かに強く叩かれた。
「いっ……」
振り返ると犯人は恵美だった。
「千尋おっはよーう!」
「あ……お、おはよう」
「むっ、リアクション薄いな~。よ~し……えいっ!」
すると恵美は勢いよく、僕の腕に抱き着いてきた。
「どう? 朝から可愛い彼女に抱き着かれるのは? 気分いいでしょ!」
「……ごめん、離れて」
僕の言葉を無視して恵美は構わず腕に抱き着いている。
「や~だよ♪ いいじゃん、私たち付き合ってるんだし」
「……離れて」
今度はさっきより機嫌悪そうに言葉を発してみると、恵美が慌てて腕から離れた。
「ご、ごめんね。……嫌だった?」
「別に……。ごめん、僕先行くね」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ」
後ろから聞こえる恵美の声には耳を向けず、逃げるように学校に向かった。
■
<昼休み>
昼休みになってすぐに恵美が弁当を持って僕のクラスまで訪ねて来た。
「千尋、一緒にご飯食べよ?」
恵美が笑顔で昼食に誘ってくる。
「あ、えっと……ごめん。今日は友達と食べる約束してて」
誘いを断ると、恵美から笑顔が消えた。
「ふ~ん……誰と?」
「そ、それは」
「春日井くん、おまたせしました」
タイミングを見計らったように下屋敷さんが僕と恵美の会話に割り込んできた。
「えっ……し、下屋敷さん」
「あら押沢さんこんにちは。どうしたのですかわざわざ隣のクラスまで?」
「いや……千尋とご飯を食べに来たんだけど」
恵美は不機嫌そうに答えた。下屋敷さんはチラッと恵美の持っていた弁当を見る。
「そうなのですか。でもごめんなさい。春日井くん、今日は私と食べる約束をしていて」
下屋敷さんは持っていた自分の弁当を恵美に見せつける。
「……二人って仲良いんだね。知らなかった」
「そうですね。春日井くんとはとても仲良くさせていただいています。学校では一番仲が良いかもしれません」
「へえ……そうなんだ」
二人の間に不穏な空気が漂っている。
「……わかった。じゃ明日は絶対私と二人っきりで食べてね、千尋」
恵美が自分のクラスに帰った後、下屋敷さんは何事もなかったように僕に話しかけてきた。
「さてご飯にしましょか、春日井くん」
「そ、そうだね」
「当然ですが明日も私と食べるので、先ほどの恵美さんのお誘いは断ってくださいね」
「う、うんわかったよ」
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