モラトリアムの贖罪

だって俺の子供時代なんてそんなもの

だからもういい加減この蒼い有刺鉄線を引き千切ろう

今じゃようやく理解もできたし納得もできた

でもだからって諦めと受け入れは別問題

もしも贖えるのならあの日々を決して忘れない


呪うように青春を夢見た

本当は詰め襟を着たかったよ

でも今は、もう何もかもが手遅れだ

空気はまるでゼリーみたいに身体中にまとわりついて

羽根の鎖に繋がれて息の根さえも止められない


夢見た現は未来をすり替え死神にすら嘆かれた

蜃気楼に潰れた希望へ黄色い薔薇の花束を!


あの日の狂気がいつまで経っても剥がれない

ねえ手首切ったぐらいで優しくしてもらえるとでも思ったの?

特に役に立たないトキでも大切にされるのに、なんて

まるで世界でたった一人の処女のよう!


あれはあれで青春だったのだと思うしかない

ただ懐古主義に陥れないだけさ

その気になればいつだってピーター・パンのままだなんて

もういい どうせ時計の針は螺子のようには回せない


些細な脈絡を元に出現する記憶が次々に脳を脅かす

だけどそれはきっと全て自分で蒔いた破滅の種

こんな日は、自分の存在が酷く馬鹿馬鹿しく思えてならない

自分の頭の悪さに吐き気がする


期待したのは眼前に浮かぶ文字の群れ

絡みつくC.G.の葡萄の蔓も心地よかった

いつだって気が触れそうなところを

ギリギリの線で迷うのが面白かった

もちろん壁に描いた無数の瞳も俺を見つめることはなく

だけど夢が見た真っ赤なT字剃刀とゴシック体の黒い文字

要するにそれは運命だとか精神性だとか存在理由だとか、

そういう青春の一ページ


気を抜けばしょっちゅう世界が平面に見える

なのに気分の悪さすら感じない

癒しのはずの錠剤も今じゃ手錠と化していた

ねえ、もう鐘の音百八つじゃ足んないよ

だってこんな電気コードの蠢く夜じゃ誰も一緒に遊んでくれない

歳月はまるで“詰み”になったジェンガのよう

カウンセラーが必要だ

楽しくお喋りできるならこの際幻聴だって構わない!


猿の自慰のようにひたすらピアノにしがみついた

破滅を望むようにひたすら安息を追い求めた

血まみれの指が奏で出す黒くて白い二重螺旋の糸

もしも贖えるのならあの日々を決して忘れない


でもだれが敵なのかもわからず何かと戦ってきて

その終着駅は己さえ見失ったあまりに寂しい独り遊び


ウォレット・チェーンの鎖に縛られて身動き一つ取れなかった

首吊りの呪文が完成する もう時間がない!

もう後戻りはできない、ささやかな運命の輪に轢き殺される前に、

壁の小説を焼き払え


だって俺の子供時代なんてそんなもの

だからもういい加減この蒼い有刺鉄線を引き千切ろう

今じゃようやく理解もできたし納得もできた

でもだからって諦めと受け入れは別問題

もしも贖えるのならあの日々を決して忘れない

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