はたらくおじさん

俺としては

仲が悪いよりは良いに越したことはない、

うまくやっていくのが何より、

と思っているのだけれど

もしや違うのかもしれぬ


彼らは俺と“うまくやっていこう”なんて更々思ってなくて

彼らにとって俺と仲良くするのはメリットでもなんでもなく

むしろデメリット、と、思っていたのではないか


例えば“有能な俺が無能なお前と仲良くしてたら、

俺まで無能だと思われるかもしれない”––––とかね

可能性は山ほどある


とにかく気に食わない、というのもあるだろう

でも嫌いだから苛める、は、考えてみれば変だ

嫌いなら付き合わなければいいだけのこと

でもそうもいかないし、つまり最低限で


あるいは彼女はそのバランスがうまく取れない人で

オール・オア・ナッシング

ある意味とても素直で自分の感情に正直な人で

つまり幼い


じゃなきゃ気づきそうなものだ

自分が職場の空気を悪くさせてるということに


例えば“無能な私が有能扱いを受けるためには、

誰かを無能だということにすればいい”––––みたい

まるで学園祭


人間は他人とうまくやろうなんて思ってないんだ

それは“なんとかする”という願望よりも強い

じゃなきゃ、今頃人類皆仲良しでとっくに世界平和

これだけ人間関係に悩める人ばかりの社会だもの


俺には彼がとても幼く彼女が愚かな人間に見える

でももしかしたらそれこそが人間の本質なのかも

うっかり隙を見せてしまった、などではない

幼稚で愚鈍で残酷であることと真実は矛盾しないから


などということを考えながら、今日も仕事だ

今日もまた苦難の一日が始まる

給料はそこそこでいい やりがいなんてどうでもいい

とにかく静かに暮らしたい

それだけが私の望みです

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る