“嫌なこと”

今日、とても嫌なことがあった

だけどすぐに終わると思った

なのにいつまでも終わらない

いつまで経ってもなくならない


寝て起きれば元気になれると思った

でも目覚めた瞬間から疲れてしまった

目覚めた瞬間から思い浮かべてしまった

そして嫌なのに考え込んでしまう

この件は俺にとって相当な“嫌なこと”になってしまっている


目頭が熱い 鼻の奥が詰まる

涙を拭かなくちゃ 鼻をかまなくちゃ

ご飯を食べないと 水を飲まないと

落ち着かなきゃ落ち着かなきゃ落ち着かなきゃ


嫌なことがいつまで経っても“嫌なこと”のままだ

いつまで経っても消えやしない

それとも、それとも時間と共に単なる記憶と化すのだろうか

それまで苦しむしかないのか 落ち着くまで落ち込むしかないのか

嫌だ 嫌だ “嫌なこと”が嫌すぎる


この記憶をどうにかしたい

この事実をどうにかしたい

一体いつになったら消え失せてくれるのか

一体いつになったら消え去ってくれるのか

嫌なことがいつまでも経っても“嫌なこと”のままだ……


それでもいつかなんとかなると信じたい

“単なる嫌な思い出の一つ”になる時が来る、と

とにもかくにも信じたくて仕方がない


もはや内容が問題なんじゃない

もはや本質はそこにない

思い出すのが嫌なんだ

考えてしまうのが嫌なんだ

思い浮かんでくるのが嫌なんだ

嫌なことそのものが“嫌なこと”になっているんだ


辛いんだ キツいんだ

どうしてそんなものばかり俺に見せるんだ

どうしてそんなことばかり俺に聞かせるんだ

どうして俺はこんなものばかり見てしまうんだ

どうして俺はこんなことばかり聞いてしまうんだ


この件は別の“嫌なこと”で上書きするしかないのだろうか

そうしていつか埋め尽くされやしないだろうか

本当に忘れることなどできるのだろうか

この“嫌なこと”を

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