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夜の都市高速を駆け抜けた後、僕たちは二人で店内を一通り見て回った。

「あれは何?」

トバリに手を掴まれて最後に向かったのは、入口近くのUFOキャッチャーだった。よく見ると、剥き出しの蛍光灯が柱の裏側に貼りつけてあるだけだった。それも寿命が近いのか、不規則に明滅している。

「このクレーンを縦横に動かして、ケースの中の景品を取るゲームだよ。やってみる?」

「うん」

僕はポケットから百円玉を一枚取り出し、追加でもう二枚取り出してから、それらを一気に投入した。まとめると操作回数が増やせるようだ。

「五回動かせるから、一度練習してみよう。まずはこの1のボタンを長押しして……」

それからまた千円かけて、トバリは数年前に放送されたアニメのキャラクターのぬいぐるみを取ることができた。

「かわいい……。これ、バッグにつけることはできる?」

彼女は自分で取った景品が気に入ったようだった。

「ストラップかボールチェーンがあれば……あぁ、あるね」

「つけてもらえる?」

「いいよ」

トバリが近くの長椅子にバッグを置いた。置き方が悪かったのか、バランスを崩して落ちそうになったところを僕が受け止めたのだけれど、そのバッグがちょっとありえないくらいに重かった。同じ大きさの鉄の塊を入れても、ここまで重くはないのではないかと思ったほどだ。

「大丈夫?私のバッグ、少し重いのよね」

「少し、ね……」

少しどころではまったくなかったけれど、女子のバッグの中身を聞くのはマナー違反だから、そのことは不問にした。ただ、この細い腕のどこにあれだけの重さを、そうと感じさせないように扱える力があるのかは大いに疑問だった。運転席から降りる時だって、そんな重そうな印象は受けなかった。

ぬいぐるみをバッグにつけてあげると、トバリはそれをひょいと持ち上げて、デコレーションされたのを嬉しそうに眺めた。

外に出ると、ようやく太陽がなりを潜め、西の空に明るく輝く星が一つだけ見えていた。

「ねぇ、私たちどこに行こうか?」

薄暮の中、地平線で燃えている世界最後の夕焼けに照らされながら、トバリは次の目的地を探していた。そうして思案する表情は、とても同世代の女子とは思えないような、神聖な雰囲気を帯びていた。

これだけ目立つ生徒なら、全く知らないということがあり得るだろうか。

ゲームセンターの奥で出会った時にも感じた違和感。

アナトラのオムライス、テーブルの傷、行き交う社会人、ゲームのルーチン表示。

それらとは何か異質な、トバリという少女。

僕はその言いようのない違和感の正体が気になり始めていた。

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