第4話 六月二十二日

『私、あいつら倒してくるね!!』


そう言ったあの日から柚木は姿を消した。


「あれから二週間、どこ行っちまったんだあいつは」


そう小言を垂らしながらあてもなくふらふらと歩いていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


あの日、柚木の言葉から俺たちはただ困惑し、呆然と立ち尽くしていた。


そんな中、静寂を切り裂くようにガラガラッと普段では気にもとめないようなドアを開ける音で俺たちはハッとした。


しかし、状況を飲み込めないままでいる俺達に、ドアを開けた張本人である担任の坂口先生が言った。


『今朝のニュースでみんな知ってると思うが、今から二ヶ月後、宇宙人が侵略になるそうだ。』


いかにも冷静に振る舞っているようにしているようだがその声は震えていた。


『そこでお前たち子供はより安全だと思われる北海道への避難が決まった。まあ、北海道も安全だとは、、、っとすまない。今から一ヶ月の準備を経て北海道への避難が始まるそうだ。とりあえず今日のところは帰れ。』


普通だったら一ヶ月の休みなんてものは喜びそうなものだが素直に喜ぶことなんかできない。


それよりも俺たちにとってはあのニュースが本当のことだったのだという事実をダメ押しされた様なものなのだから。

あれからすぐ学校は再開した、僕は二,三日だけ登校したがその間柚木は現れなかった。柚木のあの言動はなんだったのだろう、と少しの間考えたがやはり結論には当たらなかった。それより俺の頭はそんなことはどうだって良いと思ってしまうくらい混乱し、直ぐに忘れてしまっていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「世界が滅びるっていうのになんだって学校になんか行かなきゃ行けねえんだ。」


俺は学校へ行くのをやめた。というか言っている奴はいるんだろうか。なんならこうやってあてもなく歩いているとクラスメイトとバッタリ合うことだってある。


そうしてフラフラと歩いていると


『あ、京一郎じゃん』


ふと声をかけられふりむくとそこには柚木の友達である吉田がいた。


「おう、吉田さんかお前も学校サボり?」


『ハハッ、うんもう行く意味ないしね、もうみんなもいってないんじゃないかな』


そりゃそうだよな〜と微笑む吉田さんを前に思う。


『それよりさ、柚木知らない??』


「あー柚木か、吉田さんが知らないなら俺が知ってるわけないじゃんか」


『えー私は京一郎なら知ってると思ったんだけどな〜、ほら、柚木あの日よく分からないこと言って教室でてったじゃない??あれから学校にもきてないし、連絡も取れないんだよね。』


「あ〜確かに、まあでもあいつがよくわからない冗談言うのっていつものことだろ?へーきだって」


『そう?私あんまり柚木が冗談言ってるのって見たことないけど。』

「嘘つけって、あいついつも俺が反応に困るような事ばっかりいってくるんだぜ」


『そうなの!?なんかちょっと複雑、、もしかしたらそんな感じで喋れるのって京一郎だけなのかも知らないね、、、』


「そ、そうなの、、かな、ハハッ」


それは嬉しいことなのかも、、なんて一瞬思ったが今までのことを考えるとやはり少し腹が立った。


『まあ、少なくとも私にはあの時の柚木は冗談を言ってるように見えなかった、だから心配で歩いて探し回ってるの。』


確かに、いつもあいつは笑って馬鹿みたいなことを言うがあの時の笑顔は少し違った。


「確かにな、、、わかった!俺も柚木のこと探してみるよ!」


『うん、ありがとう!!何かわかったら連絡ちょうだいね!』


そう言って吉田さんと別れた


「あれ?俺吉田さんの連絡先知ってたっけ、、、?」


アドレス帳を眺めながら家路に着いたがついに吉田さんの名前を見つけることは出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る