第13話 ゾンビ

一方その頃鳴宮達は……




















「ねえしーちゃん、どうやって逃げればいいの?」




遊馬は鳴宮にそう問いかけた。



どうやら2人は、次の行動を迷って一階の空き教室で話し合いをしている段階だった。




「そんなの私に聞かれても困るわよ。私だって初めてなんだから」



「じゃあ、適当に逃げれば良いよね!」



「……あんた、そんなんで逃げれるわけないでしょ」



紫音は呆れた顔でそう言った。



しかし言われた当人は、紫音の表情そっちのけでなにやらこの状況を楽しもうとしていた。



本当にこの子、ビックリするくらい能天気で子供心の塊。良い事も悪いこともある。



でも今回それがいい方向に運びそうだ。



「ねえ、しーちゃーん! どうするの?」



「だから分からないわよ! ーーーーでも、行動しないわけにもいかないわね」



「やったー! じゃあ行っくよー!」



そう言った遊馬は後先考えずに、ゾンビの密集地帯に突っ込んでいった。



「あっ、ちょっと……! まったく、先に捕まっても知らないわよ」



鳴宮もそう言いながら、仕方なく遊馬の後を追った。



遊馬は持ち前のスピードで、ゾンビが距離を詰める間を与えず、スルスルと隙間を抜けていった。




そして、遊馬は抜けた先で手を振らながら鳴宮を待った。



ただ、ここで問題なのが、鳴宮は遊馬ほどの身体能力がない事だ。

足は女子の中間層、持久力も平均少し上。

遊馬と比べるのが可哀想なくらい、平凡な身体能力だった。



でも、鳴宮には気合があった。

“この場を何とかして切り抜けよう”という感情が、鳴宮の足を遊馬の元へ届けた。



そしてゾンビに捕まれそうなぎりぎりを逃げることができた。



「しーちゃん遅かったね」



「……あんたほど、、速く走れる、、人なんて、、中々いないわよ」



鳴宮は息を切らしながらそう言った。



私の心の中には達成感で満たされていた。

自力で柚月と同じ舞台に立てたことが嬉しくて仕方なかった。



でも初めは諦めようと思っていた。



だってこんな危機的状況を変えるには、飛躍した能力が必要不可欠になるから。



でも私にはそれが無い。



あなたは優しいから私が「置いてって」と言っても叶えてはくれなかったと思う。



「なんで」って明るい笑顔で返されちゃう気がする。

 それで私が馬鹿らしくなっちゃう。



「この子に何言っても無駄だ」ってね。



だから私が考えることは、”柚月を逃がすためにどう囮になるか”ではなく”どう二人で逃げ切るか”という方向しかなかった。



「とりあえず、あなたが逃げ切れることは間違いない。あとはどう私が足を引っ張らないかね」



「え? なんでしーちゃんが足を引っ張るのー?」



「なんでって……」



あなたが一番よく知ってるでしょ……



「……ゾンビにでもなっちゃうの、しーちゃん」



「あんた何言ってんの?」



「何って、足引っ張るって言ったら、ゾンビくらいしかいないじゃん!」



まったくこの子は……



「そういう意味じゃないわよ」



「えっ? 違うの?」



「逆に何であってると思ったのよ……」



この天然な部分、どんな考え方してるのか逆に知りたい気分だった。



「んで、話し戻すけど、私はあなたより足が遅い。だから逃げることに関して足手まといになる。」



「そうなのー? でもしーちゃんといたいから死なせないよ」



「イケメンかよ!」



私は決め顔の柚月に対して、本気でそう思った。

普通なら冗談で、ボケで女子に言うセリフだが、今の私は反射的に口に出していた。



「私女だよ?」



待ってよ。そんな正論ぶつけないで、分かってるから。

しかも、本気でそう思った私の気持ち返してよ……



「……もう、早く方向性出すわよ」



私のメンタル保たなそうなんだけど。



「しーちゃん、別に大丈夫だよ。普通に逃げてれば何とかなるって!」



「そうだと良いけど、それだけだとなんか上手くいかないような気がするのよね」



鳴宮は何かを感じ取っているかのようだった。



「そうかな、何とかなるような気はするよ?」



「その能天気さを信用してみるわ」



そうして二人は何とか歩き出すことに成功した。



「それで、あの二人どうなってるかなー」



「どうって、あんま期待しないほうがいいんじゃないかしら」



「えー、だって楽しみじゃない?」



「でも、あの鈍感男よ?」



「あー、そっかー」



「まあ、でもあの子にも問題はあるのだけどね」



「なに問題って?」



「あの子の距離が異常に近いことだよ!」



鳴宮は悩むような表情を浮かべてそう言った。



「異常に近いとなんでダメなの?」



「近かったら、自分に気があるかわからないでしょ」



そう、しずくはいつだって距離感がバグっている。

会話の時の物理的距離が近いし、仲良い男子なら購買まで二人っきりで行っちゃうし、そして何よりボディタッチが多い。

太ってる男子のお腹を触ったり、隣の男子の肩に手を置いたり、笑いながら男子の肩を叩いたり。

なんせ、しずくは勘違いさせるのがとにかく上手いのだ。



そういう性格だからみんなから誤解を招く。

だからしずくが届けたい本当の想いが、届かないことが多い。

どうでもいい人には好かれるのに、好きな人には諦められてしまう。



そんな状況の継続がどれだけしずくに苦痛を与えているのか、それはあの子にしかわかるまい。



「だから今回も来栖の理性を脅かすだけになるでしょうね」



「じゃあ、しずちゃん襲われるかもしれないってこと?」



「まあ、肯定したいとこだけど、あれには男気が無いからね。期待はできないわね」



そんな可哀そうなくらい僕は言われたい放題だった。



それから遊馬たち二人は周囲を気を付けながら、マップを一周した。



気づいたことは意外とゾンビの数が少ないこと。

おそらく校舎全体には二十体ほどで、二つの棟で三階ずつあるわが校には、一階当たり三体のゾンビがうろついているという計算になる。



「案外難易度が易しいのね」



私は少しだけ笑みを浮かべて言った。



一つにフロアに三体のゾンビがいる状況は、明らかに難易度が低いと感じていた。

まずワンフロアは教室と廊下に分かれていて、しかも教室数も二桁いかないくらいが存在している。

その中に目が見えていない、追いかけるスピードも走れば余裕を持ってかわせる、そんな鬼が三体いて何が怖いのか理解に苦しむ。



さっきは、いたずらなのか、全体の半分がワンフロアに集結していたせいで危機的状態に陥ったが、そうでもない限り捕まりそうな雰囲気は感じなかった。



「そうなの?」



「ええ、あなたなら余裕よ」



私は確信を持ってそう言った。



――ピンポンパンポーン



どういう訳か館内放送が入った。



「開始十分が経過しました。これよりゾンビの数を増やします」



そうナレーションが学校内に響く。

なんとも都合の悪い展開だった。



「都合よすぎないかしら。どこかで監視されてたりするのね?」



「違うよー! 紫音ちゃんが余裕とかいうから作者が焦ったんだよー!」



「————そんなメタいこと言わないでよ」



私はそんなことを言ったが、すぐにそんな余裕は無くなった。



「嘘、もうこんな所にまで?」



「やばいよ紫音ちゃん、囲まれた……」



私は絞り出すような声で言った。



今私たちは一階の廊下中央辺りにいた。

しかし逃げ場がなく、両方向からくるゾンビに成す術無く追い込まれていた。

もうこうなったら、”あれ”を使うしかなかった。



「柚月、逃げて」



「えっ紫音ちゃんは?」



「いいから、あんたはこれをもって逃げて」



「わ、分かった。絶対に助けるから!」



遊馬はそう言うと、器用に体を動かしてゾンビたちの間を抜けていった。



「————紫音ちゃん、絶対助けるからね」



そう呟きながら遊馬は逃げていった。



一人、ゾンビの輪の中心に取り残された私は、冷めた考えをしていた。



「あのね、これゲームだから捕まっても大丈夫なのよね……」



それを言ったら緊張感がなくなるから言わなかったけど、別に捕まっても良かった。



そして私は柚月の囮としての役割を全うして、ゾンビたちに飲まれていった。



「あぁ……あぁ……」



それからこの校舎には、また新しく女のゾンビが生れ落ちたのだった。






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