第10話 ミニゲーム

「これからミニゲームに移ります。特設会場へ転送しますのでその場でお待ちください」


機械の声がマップ内に響き渡る。

僕らはその声を聞きながら、

別ステージに移動させられた。


ここはオリジナル通りなのかもな。

どんなゲームが待ってるんだ?

ゲームといったら何かしらの速さや量の競争とか、

爆弾回し的な遊びとか、

さまざまんな種類がある。

さて、どんなゲームが来るのかな。


「それでは、移送します」


僕らの身体が白い光に包まれる。

そして次の瞬間見覚えのない部屋に転移していた。


「ここは、どこだ?」


「どこかの教室かな~」


やっぱり、

オリジナル通りにはいかないようだな。


この教室には僕としずくの二人。

シチュエーション的には、

夏休みの学校ってところか。

空は快晴だ。


僕らの格好も、

どういう訳か制服になっていて困惑していた。


「これから二つのグループに分かれて、あるシチュエーションを再現してもらいます。その完成度が高いほうが二十コインずつを付与しますので、頑張ってください」


ナレーションがそう告げると、

楽しんでいるような声色でお題を告げた。


「今回は誰しもが羨むような、青春男女シチュだ!」


「それ、お前の趣味だろ……」


僕はため息混じりにそう言った。


あの恋愛オタクの言う事だ。

ただの好みでやってるだけに違いない。

もしかするとこのためだけに、

こんな手の込んだことをしたのかもしれない。


まったく、

呆れたもんだよ……


「ねえハルくん、どうしたらいいの?」


「僕に聞かれてもな……」


僕は頭を掻きながらしずくの質問に返答した。


そしてとりあえず周りを見渡してみた。

何か使えそうなものがあるかどうか探してみると、色々な物が見つかった。


「筆記用具に掃除用具、黒板に関するものだったり、色々あるな」


「これでどうすればいいのかな~?」


僕に一つ策がある。


「しずく、とりあえず都合のいいことにここに夏休みの宿題がある」


「うん、それがどうしたの~?」




一方その頃、他教室は……


「うわー、何か私男子の制服着てるんだけどー!?」


「私も、制服着てるわね」


そして二人もしずく達と同じような説明を聞いた。


「な、なんなのよこれ! こんな茶番付き合ってられないわよ!」


「紫音ちゃん何言ってんのよー! 楽しそうだよー!」


遊馬は目を輝かせながら紫音に言った。

楽しそうな遊馬とは対照的に、

窓の外に蔑むような目線を向けていた。


「なんであんな下衆野郎の言うこと聞かなきゃいけないのよ……! こんな悪趣味なものに付き合わせられなきゃいけなくなっちゃいけないのかしら!」


鳴宮の不満を聞いた後、

耐えかねた奏真はスピーカー越しで声を漏らした。


「なあ、鳴宮さん。悪趣味悪趣味って言わないでくれませんか?」


「だって、本当のことじゃないのよ」


鳴宮の言葉は奏真の心にクリーンヒットした。


「……とにかく! やらないとコインは好春たちのものだからな」


「別に良いわよ、負けてもいいし」


「紫音ちゃん! ウチは嫌だよ! ウチは勝ちたいんだよ!」


遊馬は鳴宮に対抗するように言った。

どうやら相当な負けず嫌いらしい。

鳴宮も遊馬の押しに負けて渋々承諾した。


「それじゃあ始めよー!」


鳴宮はため息をつきながら、

「分かったわよ……」と言って、

次の遊馬の言葉を待っていた。


それから時が流れて、

ミニゲームの制限時間が終わった。

そして結果は……


「ゲームマスターの審査により、勝者は好春さんしずくさんペアです」


「嘘、でしょ……あれだけ頑張ったのに……」


隣の鳴宮は肩を落とした。


まあ、プライドの高い鳴宮のことだ。

このゲームに参加することにも散々ごねたはずだ。

僕にはなんとなくそんな気がしていた。


しかも負けたなんて聞いたら、

さらにあいつのプライドが許さないだろうからな。


「なんで私たちが負けたのよ! 何が気に食わなかったって言うの?」


「なんつうか、少女漫画風であんまり萌えなかったんだよ」


「そんなのあんたの好みじゃないのよ!」


「審査員なんてそんなもんだっつーの!」


審査員だって人間。

公平に判断しようと持っても無理なものだ。


好みの異性が人によって異なるように、

好きな音楽が十人十色なように、

シチュの好みも人それぞれだ。


なんて思ったけど、

さっきのあれは僕には糖度が高い……




僕の回想はミニゲーム中に遡った。


「ハルく~ん! 何してるの~?」


机に向かって宿題を済ませようとする僕は、

誰にも邪魔されたくないと言わんばかりに、

バリアを張っているように見せていた。


そんな中でもお構いなくしずくはバックハグをする。


これがしずくの特性だ。


見方によっては自己中にも見える。

でも僕からすれば、

壁を突き破ってくれる心地の良い相手なのだ。


「ああ、しずくか。早めに宿題終わらせようと思ってな。今片づけてるとこ」


「ふ~ん。ねえハルくん、今教室に二人しかいないね」


「まあ、ってお前何する気なんだよ……」


僕は少しおびえながらそう言うと、

しずくは耳元で囁いた。


「私といいことする?」


その言葉を聞いて、

僕は少し困惑していた。


あ、あれ? 

僕いつも通りって注文しなかったっけ。

な、なんかいつもと違う気が……


「いいことって?」


「え~、女の子にそんなこと聞かないの」


「は……え……ご、ごめんなさい」


なんで僕謝ってんだろう。

別に悪いことしてないんだけどな……


僕は、しずくの予想外の行動に驚きつつ、

次の展開を考えていると、

しずくは、またしても驚愕の行動を取ってきた。


「うぐっ……!」


「やっぱここは、どの椅子に座るよりも安心するな~」


ここで本領発揮してきやがった! 


本当に無防備な人だよ。

人の目とか気にしてないんだよな。

まあ、気にしてたらいつもの性格は出てないか。


僕のもものあたりにしずくは腰を下ろした。

子供のように足をパタつかせて、

何やら楽しそうにしていた。


「あっ…………!」


「しずく、危ないっ!」


ったく、危ないな。

もっと気をつけろって。


僕は膝の上から落ちかけたしずくを、

後ろから抱きしめた。

それと同時に僕の顔は火が出るくらい熱くなっていた。


「は、離さないで……!」


「し、しずく?」


「お願い、少しの間そのまま、ね?」


僕はしずくの真意を図りかねていた。


なあ、これって演技だよな。

迫真すぎないか……?

しずく、役に入り込みすぎてるんじゃないか?


僕は、しずくのリアリティのある演技に圧倒されていた。


でもまあ、

僕に何か害があるわけじゃないし、

しずくも楽しそうだしいっか。


「そこまで! タイムアップです。皆さんお疲れさまでした。これで一ターン目のミニゲームを終了します」


僕らは、

ナレーションと同時に物理的な距離を取った。


「ハルくんのおかげで勝てたよ。ありがと~」


「ああ。よかったよ。それよりしずく……」


「うん? どうしたの~?」


僕は少しの間しずくの顔を見ていた。

しずくの表情には、

いつものイタズラっ子のような笑みはなく、

通常運転の様子だった。


「う、うん……なんでもない」



しずくは僕の言葉を聞くと、

いつもの調子で笑っていった。

そして僕の背中を叩いて、

「また後で」と言ってマップに戻った。


まあ、あいつがそう言うなら気のせいなんだろうな。


僕は少しの間その場に立ち尽くしていた。






その頃、女子親友三人組は……


「で、来栖君はどうだったのかしら?」


「意外と、力強かった……」


「へえー、良かったね、しずく」


「良かったってなによ~……」


「なんかしずちゃん、珍しい顔してるー!」


「柚月もやめてよ~……」


そんな女子トークが展開されていることを、

僕には知る由もないのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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