第9話 ハプニング

夏休みに入って数日の今日。

どういう訳か家にソファが届いていた。


「なあしずく、このでかいのは誰が送ってきたものなんだ?」


「紫音ちゃんだよ~。なんでもまた行きたいのに床が硬くて嫌だったんだってさ」


なんてわがままな女なんだ。

それ以上にどんだけ金持ちなんだよ鳴宮の家は。

人に良いソファを送れるほど、

潤沢な資金があるのは、

羨ましい限りだ。


そんな話をしていると玄関から音が聞こえた。


「おっじゃましまーす! おー、本当にあった」


「ちゃんと届いていたみたいでよかったわ。これで今日から安心して過ごせそう」


なんて嫌味ったらしいお嬢様だ。

もっといい性格に育たなかったのか?


僕はそんな怪訝な顔になっていた。


「好春! 来たぞ……って女子多いな!?」


「お前が人集めろって言ったんじゃないかよ!」







昨日の夜、

LINEで奏真から連絡が来ていた。


「明日までに人集めてくれ。とりあえず後三人。よろしくな!」


そのラインにはニッコリな絵文字が付いていた。

そして、僕はため息をつきながら続ける話を考えた。


こんな無茶すぎる依頼を

あんな時間に送ってくるって、

無理難題がすぎるよな。

しかもぼっちな僕に……


でも、拒否したところで「やれ!」の一点張りが目に見えた。

だから仕方なくしずくに相談した訳だ。


「んで、人集めてどうするつもりだよ」


「そりゃ、コレに決まってるだろ!」


そう言って奏真はゲームのソフトを取り出した。


「それだったら別に僕のやつで良くないか?」


「いいや、それじゃあ駄目なんだよ……!」


なんだその不敵な笑み。

てか、なんか企んでやがるなコイツ。


でもその確証がなかったからやってみる他無かった。


「ねえ、コレって私たちじゃなきゃいけなかったのかしら」


「ごめん、僕に友達がいないんだよ……」


そう、このゲームは誰がやろうと大して変わらない。

しかし致命的な欠点として、

僕には人望の欠片もないのだ。


「なんか、頼んだ俺も申し訳なくなっただろうが」


「なんかごめん……」



奏真は気まずい空気が流れた後、

見覚えのない機械をカバンから取り出した。


「おい、なんだよそれ」


「まあまあ、見ててくれよ」


奏真はそう言うと、

テレビとの接続を始めた。


「ねえ、何か胡散臭くないかしら」


「えー、そんなことないと思うけどなー」


遊馬は呑気にそう言った。


「やってみてからでいいんじゃないかな~」


しずくも続けていつもの調子で言った。


「僕はやめておいたほうがいい気がするけどな」


僕はおかしいと思っていた。

あいつが持ってきたソフトのハードは家にあるし、

そもそもソフトをわざわざ僕の家まで持ってきた。

何か良からぬ事に巻き込まれるような気がする、

のだが……


「ヨッシー、いいじゃんやってみようよ!」


こんな危機感の無いやつらがいるせいで、

僕らも巻き込まれそうになっているな。


「みんな準備できたから、そこに座ってくれ」


奏真は僕らをソファに誘導した。

そしてヘルメットのような機会を手渡してきた。


「お前、これ某人気アニメのパクリじゃんか」


「言うな! 開発に数年の歳月をかけた最高傑作なんだ。いいから早くつけろよ!」


そう言った奏真に無理やりつけさせられると、

すぐに目の前には仮想世界が現れた。


「なんだよここ」


「なんかすごい世界だねー!」


「ふん、たかが仮想世界なのよね。さっさと終わらせて帰りましょ」


「え~、私楽しみだな~」


各々が勝手に感想を述べ、

目の前に広がる見覚えのある景色を見ていた。


「では、これからゲームを始めます。ゲームマスターは俺、天方奏真が務めます!」


「おいこれ、あのパティーゲームじゃないかよ!」


「そうだよ?」


「だから何?」みたいな感じ言うなよ。


でも、

今更ゴチャゴチャ言っても無駄なことはわかる。

何を言っても、

終わらせてもらえそうな雰囲気じゃないからな。


今回のマップは天界のようだ。


三段構成になっていて、

それらすべてが雲の上にマスがあり、

所々に土管が見えたり、

上下移動には雲のリフトを利用するようだ。


「ねえハルくん、あんなマスあったっけ~?」


「いや、見たことないよ。てかマス増えてない?」


やっぱりなんか違和感がすごいな……


「おいおいお前ら、ネタバレしてくなよ。楽しみが減ってくだろうが!」


はいはい、付き合ってあげますよ。


「んで、早くルール説明してくれ」


「はいよ。じゃあ説明していくぞ」


今回のゲームは、

アスタリスクコインを誰が一番多く取れるかの勝負。そのコインと交換するには、

コイン二十枚との交換が可能だ。


コイン獲得マスや搾取マス、

ハプニングマスにミニゲームマス。

様々なマスがある。


しかし……


「なあ、あの青春イベントマスってなんだ?」


「知らないわよ! どうせ、しょうもないんでしょ!」


ああ、そんなはっきり言っちゃうのね……

でも大賛成! 

あんなきっぱり言ってくれるの嬉しいわー!


「おい、そこのお前。今我のことを愚弄したな?」


奏真はそう言った。

どうやら神様感覚らしい。


「ええ。だってこんなどうでもいい事、ずっと考えてたんでしょ?」


なんて痛快な意見なんだ! 

もっと言って欲しい。

それであいつの面倒な計画を破断にしてくれ。


「お前、よくもそんなこと言ってくれたな! とりあえずお前の順番は最後な」


「ええ。それくらいならどうってことないわ」


それから、

僕らは順番決めのためにサイコロを振った。


ここまであの世界をパクるとは、

意外と製作期間が足りなかったのかな。

しかも「アスタリスクコイン」ってなんだよ。

どうせ良い名前が浮かばなかったから、

怠けただけでしょ。


そんな文句を垂れ流しながら、僕らはゲームに突入していった。


「じゃあ、まずはわたしからだねー!」


遊馬の出た目は四。

コイン獲得マスにとまった。


「次は私だね~」


しずくの目は三。

アイテム獲得マスにとまった。


「あっ、キノコ出た~」


「やっぱり、あのゲームの部分を引き継いでいるだけっぽいな」


確かに仮想世界でのパーティーゲームは珍しいけど、ゲーム内容は家でしずくとやっていた時と変わらないな。


「ふふん、なめてもらっちゃ困るよ。本番はこれからだ……」


ゲームマスターは、

眠っている四人の隣でそう呟いた。


「次は僕だな」


僕の出目は五。

遊馬と同じコイン獲得マスに止まった。


「最後は私ね。ほーらよっと……」


鳴宮の出た目は六。

ハプニングマスにとまった。


「これから、鳴宮さんには特設ステージに移動してもらいます」


今度は機械的な声がした。

どうやらAIがアナウンスしているようだ。


「そこはオリジナルだな」


「楽だぜ? 俺しゃべらなくていいから」


「ただの面倒くさがりだったのかよ……」


呆れた野郎だよ。

楽するためにそんなプログラム使ってどうすんだか。


それから鳴宮は移動させられ、

気づいた時にはとある校舎の裏に立っていた。


「それでは、鳴宮さん生存してください」


「え……? ど、どういう事なの?」


「どうやら困惑してるようだな。初めてだからルール説明していくぞ。」


どうやらこのハプニングマスでは、

ある危機的状況から生還しろという内容だ。


生還すれば四十枚のコインが手に入る。

失敗すれば五枚を搾取される。


「な、なんなのよそれ……」


「あれ? 怖気づいちゃったのかな?」


奏真は煽るようにそう言った。


まったく、大人げないな。

いくら気が強くても一人の女子。

恐怖心も持ち合わせているはずだ。


「そ、そんな訳、ないでしょ……私ともあろう人がこんなんで、怖がる訳がないわよ」


おいおい、

あからさまに怖がってるじゃないかよ。


「そうこなくっちゃな! それじゃ始めるぞー!」


奏真の一言でストーリが始まった。


どうやら設定は、

いじめられた陰キャが

校舎裏に呼ばれてボコボコにされる。

いわゆるリンチというやつだ。


様々な状況が考えられるが、

当たり所が悪いと死ぬ可能性もなくはない。


しかし、ほとんどの場合死ぬことは考えられないが……


「おいおい、やっときたじゃねえか」


「な、なんなのよあんた達……」


「へえ~、いい顔するね……もっと見せてよ」


「こ、こっち来ないでよ、この変態!!」


あれ、鳴宮意外といけそうか?


「ほら、逃げんなって! こっち来いよ!」


鳴宮は男に髪を引っ張られているようで、

苦悶の顔を浮かべながら抵抗していた。


「あんた、離しなさいよ……! 私に触れるなんていい度胸ね!」


「ああ!? なにいってんだてめえ!」


そう言った不良と思し人は、

持っている金属バットで脅し始めた。


あの不良、

女子に手を上げるとかプライドの欠片もないのかよ。


「おい、言うこと聞けって言ってんだよ! 痛い目見てえのかよ!」


「あんた、私のこと本当に殴れるの?」


「あぁ? 何言ってんだよてめえは」


「不良にもプライドってものはないのかしら。女子を一人囲んで、数人の男子でいじめるなんて、ダサいにも程があるわね!」


おいおい鳴宮、その辺にしとけって。

そんな挑発してどうするつもりなんだよ。


「言うじゃねえか。おいお前ら! 構わずやっちまえ!」


ほら、言わんこっちゃない。

どうすんだよ鳴宮、

状況はだいぶ不利だぞ?


「……えい!」


「な、なんだ!?」


鳴宮の奴いつの間に……


「私が武器を持ってないとでも思った?」


「クソ、今日のとこはずらかるぞ。覚えてやがれよ!」


あいつら、

いじめられっ子が抵抗してきたから、

ビビッて逃げたってとこか。


「鳴宮さんクリアです。それではゲームマップに戻り、コイン四十枚が付与されます」


何はどうあれ鳴宮は、

かなり僕たちよりリードした状態で次のターンに臨めるわけだ。


十ターンある内の一ターン目が終了した。


この後ミニゲームに入っていく流れだが、

どうなっていくのやら……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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