第8話 回想

初日の夜、僕の理性には最大の危機が訪れていた。


シャー……


シャワーの音が部屋にまで聞こえてくる。

それが僕の動悸を増幅させていった。


なんだよこの状況。

今まで生きてきた中で全く経験のない事態だよ。

しかも入る前に、

「一緒に入ろうよ〜」なんて言われるし。

からかいで言うならまだしも、

さも当然の様に言ってきたんだ。

何でも、

「昔入ってたんだから、今更じゃない?」なんて、

とんでもないこと言い出すんだよ?

一緒に入ってたのは小学生まで、

それからはもちろん別々で入ってたし。

しかもあの発育だ。

あの頃のしずくと同じに見れるなんてバカ言うな!


そう考えると、男って単純だな……


なんて少し男の愚かさを憂いていた。

別に僕はアイツと何かしたいとか、

そんな感情にはなれそうになかった。

まあ、

こんな状況のしずくに手を出す方がおかしいのだが、やはりまずは生活の安定が先な気がする。

明日とりあえず服は友達とでも買いに行ってもらって、それで衣食住は何とかなりそうだ。

後は僕がこの生活に慣れるだけだが、

いかんせん女性経験皆無の僕には難題だった。


あー今、生まれたてのアイツが湯船に浸かって……

ううん、ううん、ううん……!

ダメだダメだ、

もっと無関心にならないと!

あの大きなメロンが二つ、

くびれたお腹に締まったお尻……

って、どんどん妄想が過激になってるから!

やばいな……

これから僕大丈夫かな……


「ハルくん、お風呂空いたよ〜」


「えっ!? あっ、うん。分かったよ!」


変な声出ちゃった……

聞こえてないかな?


「ハルくん? 大丈夫?」


「あ、ああ……」


僕はしずくの顔をまともに見れずにそのまま、

お風呂場に向かった。


しずくはと言うと、

ソファではネトフリでドラマを見ている。


あの妄想したしずくの姿が浮かんでしまう。

顔が暑い……

早く風呂入って忘れよう……


僕はため息をつきながら、湯船で体を温めた。


それにしても大変な事になったな。

しずくを救えたのは良かったけど、

これからが思いやられるな……

というか明日も学校あるけど、

バレたらどうなるか分からないな。


僕が風呂の中で思いに耽っている間、

しずくが見ていたドラマはすでに半分を超えていた。


名前は聞いた事なかってけど、

同級生にスタイルのいい可愛い女子がいるって噂になっていたのだ。

奏真主催の男どもの理想の彼女ランキング1位。

告白の量もかなりのものらしい。

その結果、女子からのひんしゅくを買うことが多いそうで、奏真曰く、友達関係で苦労が多いようだ。

そんな女子と同居。

もしバレでもしたら,男どもが何と言うか……


あれ、何か頭がボーとしてきたような……


お風呂の外では、しずくがドラマを1話見終わった後だった。


そして次の瞬間、目の前が真っ暗になり、しずくの声が風呂場にこだました。









「ん、目覚めた?」


僕が目を開けると、

何かの障害物越しにしずくの顔があった。

なにやら覗き込むようにしずくは僕の顔を見ていた。


「う、うん……結構長い時間こうしてたか?」


「うんとね~、大体一時間くらいかな~?」


嘘でしょ……!? 

そんな寝ちゃってたのか。


「しずく、いつからその体勢に?」


「最初っからだよ~」


しかもそんな長時間、

なんか申し訳ないな。

僕は罪悪感を抱えながら起き上がろうとすると、

何か柔らかいものがつっかえた。


「いやん」


「な、なんだ!?」


僕は意味も分からず、

しずくの膝の上でただ電気を見上げていた。

そしてようやく覚束なかった意識もはっきりしてきた。


「まさか、このでかいやつって……!」


「私のおっぱい~」


僕はその声を聴いた瞬間、

顔の温度が上がっていく感覚があった。


「もう、ハルくんのエッチ~」


「だって、起きたら目の前にあったんだもん……」


「まったく、可愛い反応しちゃってね~」


しずくは満足げに笑うと、

からかう時特有の口調になっていた。


本当にこういう時はイキイキしてんだから。

いつも座布団の上でだらけてるだけなのにさ。

まあ原因作ったの僕だし、

あんまり文句は言えないんだけどさ、

そういう時に限って、

更に楽しそうにしやがるんだよな。


それから僕はゆっくりと起き上がると、

しずくが眠そうに欠伸をするのが見えた。


「しずく、もう寝るか?」


「うん……ちょっと眠くなっちゃった~」


しずくは目をこすりながら言った。

そして僕は自分の部屋に戻ろうとすると。


「しずくは居間に布団ひいて寝てよ。」


「え? 一緒の布団に寝るんじゃないの~?」


「お前、一緒に寝るつもりだったのか?」


「別に良いんじゃないかな~。だって何も起きないでしょ?」


「ーー起きちゃうかもしれないでしょ?」


「ハルくん、もしかして何か起こす気でいたのかな~?」


「ち、違うよ! 一緒の布団だったら狭いだろうし。別々で良いんじゃないかなって。」


なんで分かっててわざと聞いてくるのかな。

意地悪極まりないじゃないか。


「別に、二人で一緒にこの部屋でいいと思うけどな~」


「まあ、それならいっか」


確かにいちいち離れて寝る意味も無いな。

まあ別に寝る位置はどこでもいいんだけど、

しずくがそう言うのならそうしようか。


それから僕の布団を部屋から持ってきて、

来客用の布団を並んでひいた。

電気を消し、

月の光を眩しく感じた。

先に布団に入ったしずくは既に寝息を立てていて、

今日の疲労感がどんなもんだったのかがよく分かった。

僕は、布団に入りはしたが、

さっきの気絶もあってか眠気がほとんどなかった。


ふと隣を見る。


僕はしずくの寝顔を見て思った。


やっぱり、

男どもがこぞって彼女にしたいというのもうなずけるな。

その穏やかな表情は、

誰しもが独占したいと思うような顔をしている。


これは特等席でいい景色を見れたような感覚だ。


そして一通り見た後僕は天井を眺めた。

別に何を考えるわけでもない。

ただ見ているだけだった。

それからどれだけ経っただろう。

突然しずくがもぞもぞ動き始めた。


おいおいおい! 

まさか僕の布団に入ってきてやしないか?


一回布団を上げてみると、

しずくが丸まって寝ているのが見えた。


こういう時はどうするのが正解なんだ?

布団に戻すのか? 

それともこのまま放置?


僕が出した結論は放置だった。

しかしこれが翌日の徹夜につながる大きな選択ミスとなった。

今度は、

しずくの身体がどんどん近くに寄ってきたうえに、

最終的に僕の肩あたりまで上がってきたのだ。

しずくの寝息と胸の鼓動のせいで、

僕の目は覚醒し、

来ていた眠気もすべてが吹き飛んでしまった。

そしてそのまま、

朝日を眺めて鳥のさえずりを聞いたのだった。









「まあ、こんな感じなことがあったよ」


時は現代の食卓に戻った。


「しずく、あなたなんて破廉恥なことしてるのよ!!」


「え~、そんな事ないと思うけどな~」


しずくはいつもの調子でそう言った。


鳴宮さんよ、コイツにそんな自覚があると思ったら大間違いだからな。


「しずちゃんって、結構大胆なことするんだねー!」


「いや、大胆てレベルじゃないでしょ」


「私寝相悪いから、よくそうなっちゃうんだよね~」


しずくのその言葉を聞いて、僕と鳴宮さんはため息をついた。


「来栖君、それであなた、しずくに手出してないんでしょうね」


「出してないよ! 神様に誓って断言できる」


「それは男としてどうなのかな……」


どっちなんだよ。出しって欲しいのか、出して欲しくないのか。はっきりしてくれ。


「ただ、これだけ家庭的なところを見ると、ね」


「そうだねー、うちが欲しいくらいだもん!」


おい待て待て、こいつら何の話してんだよ。


「さっきから、話の趣旨が分からないんだが」


「いいの。ヨッシーはわからなくて」


「えっ? ヨ、ヨッシー?」


「うんー! だって好春って呼びずらいんだもん!」


出た! クラスには一人いる、距離感がバグってるやつ! 

元からバグってるやつがいるのに、増えないで欲しいんだがいんだけどな……


「でもさあんた達、同居してるのに付き合ってないんでしょ?」


「うん、別に幼馴染だし」


それ以上でも以下でもない。しずくが素を出しているのは、その要因がでかいと思っている。


「あっそ。じゃあさ、しずくが付き合ったらどうすんのよ?」


僕ははっとした。


確かに、その可能性は大いにある。今のところしずくからは男の話を聞かないが、今後いい男と出会うかもしれない。


「まあ、そん時考えるよ。今は二人で生活してるの楽しいから、あんまり他の場所行って欲しくないけどね」


「だってさ、しずく」


「うん、私はこの家から出ていくつもりないもん」


僕はどこか安堵感を覚えた。

どうしてかはわからない。

でもそんな遠くない未来のような気がして、不安になっていたのは事実だ。


「まあ、今日は普通にしずくの家に遊びに来たかっただけなのよ。だから来栖君には迷惑かけちゃったわね。」


「好春でいいよ」


「そう。じゃあ好春君、またお邪魔するわね。しずくもまた学校で」


「うん~、二人とも来てくれてありがとう」


「バイバイ、二人ともまたねー」


二人はそのままアパートから出て行った。


本当、嵐のようだったな……


「ハルくん、この生活楽しんでくれてたんだね~」


「うるさいな! 別に良いでしょ!」


「いや、悪いなんて言ってないよ~? ただ嬉しかったな~、と思ってさ」


心なしかしずくの顔が赤いような気がする。少し珍しいなと思った。そして二人で顔を見合わせながら笑い合った。

それから、いつも通り二人でマ〇オパーティーをしながら盛り上がったのだった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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