第15歩 地獄の体育祭

 時は流れ、高校生活が始まってからもうすぐ《1ヶ月》が経とうとしていた。



「1ヶ月後は体育祭だぞー。皆どの競技に出るか早めに決めとけよー。来週アンケート取るからなー」




 遂に来てしまった地獄の体育祭。


 別に俺は滅茶苦茶運動神経悪いって訳ではないが、地獄だ。


 クラス一丸となってやるものが凄く苦手だから。自分が躓いてコケたりして負けたら全て俺の責任になる。


 1度小学生の頃自分がコケたせいで負けてしまった事があった。それが今でもトラウマなのだ。


 その後色々な人に「あいつのせいで」「あーあ負けちゃった」等と俺に聞こえる位の声量で言われた。



 それが原因で俺は体育祭や皆で協力して行う合唱コンクール等も苦手になった。




 先生から配られた競技一覧が載ったプリントを見てため息を吐く。


 他人に迷惑がかからないように、1人の競技にしよう。全員参加のリレーとかは……嫌だけどやるしかない。


 休みたい。休みたいけど、折角の高校生活。前の自分とは変わりたい。









《1ヶ月と1週間》


「今日は先週言ってた通り体育祭の出る種目を決めていくぞー、それぞれやりたい所に手を挙げろよー」


 先生が競技を黒板に書いている時、クラスの皆は友達とどれに出るかを話し合っていた。



 ・100メートル走

 ・借り物競走

 ・二人三脚

 ・クラス対抗リレー

 ・学年対抗リレー


 と、こんな感じだ。少ないかもしれないが、これプラス応援合戦とかがあるし、全学年でやるからこのくらいが丁度いい。



 1人1競技絶対出ないといけない。クラス対抗リレーは強制的に全員だ。

 学年対抗リレーは選ばれた人達が全学年で競い合う。







 俺は無事に100メートル走になったのだが……二人三脚の人数が足りなくジャンケンをする事に。


『ジャンケン、ポン』



「おー、じゃあ最後の枠は村上で決まりなー」



 …………なん……だと……。


 1番苦手としている他人と協力して行う競技をやる羽目になって俺は絶望の表情を浮かべながら席に着く。


「む、村上くん大丈夫……?」


「うん……」


 村田さんが心配そうに声をかけてくれる。いつもなら嬉しいのに今は喜んでいる場合じゃない。


 あぁぁぁぁぁ。終わった。まじでやだ。


 トラウマが蘇る。2度とあんな思いはしたくない。最悪だ……。



「何暗い表情してんだー?」


 ポンと肩に手を置いて話しかけてきたのは前山くん。


「二人三脚頑張ろうな!」


 眩しくて灰になってしまいそうな笑顔を向けられる。


 頑張ろう? てことは前山くんも二人三脚!?


 多少仲がいい前山くんとなら何とかなるかもしれない!


「前山くん、相手もういる……?」


 前山くんは陽キャだから既に相手がいてもおかしくないけど、ダメ元で聞いてみた。


「いや、いない。だから組もうぜ」


 なんという吉報。少し不安が薄らいだ。


「うん!」



 何となく村田さんの方を見ると顔を肘で支えながら何故か微笑していた。



「?」




 前山くんと組めたからといってトラウマが無くなる訳ではない。失敗しないようにいっぱい練習しないとな……。



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