第14歩 前山くんと三上さんとの絡み
《14日目》
村田さんと一緒に映画を観に行った翌日の日曜日。俺はバスに乗り遅れそうになって久しぶりに走ったし、初めての女子と2人きりの映画だったし、長時間歩き回ったしで疲れていたのか起きた時には夕方になっていた。
折角の休日を無駄にしてしまったと後悔と虚無感に襲われる。
ふと昨日の事は全部俺の夢だったのでは? と疑問に思った。
財布を確認すると、映画館の券や昼食のレシート等が入っていた。日付も確かに昨日のものだ。
間違いない。昨日俺は村田さんと2人きりで遊んだ。
今になって思う。よく2人きりで遊べたなと。昨日の自分はテンションが上がってハイになってたのだろう。
普通の精神状態なら絶対無理なはず。それでもかなりマシだったのは、思考が故障して狂ってたからだろう。
うん、凄いよ昨日の自分……。本当に昨日の事は自分がやったのか今も少し疑問に思う。
誰がが憑依してた可能性もあるのではと意味わからん妄想までする始末。
そしてまた1つの不安が頭によぎる。
月曜日どんな感じで村田さんと顔合わせればいいんだ……。
距離感に悩んでいた。
1回遊んだだけで、「よーっす」て感じはなんか気軽過ぎるし、かと言って「あ、どうも」みたいなよそよそしい感じはおかしいし……。
その間がまじで分からん。どうすればいいんや……。
いや、いつも通りでいいよね。うん? いつも通りってどんな感じだったっけ……。
「うがぁぁ」と頭を悩ませているとスマホの通知音が鳴った。
【昨日はありがとう。また行こうね】
村田さんからのメッセージだった。
【こちらこそありがとう。また行きたいです】
返信し終わり「ふーっ」と一息つく。
するとまた通知音が鳴り響いた。
【昨日はどうだった?】
まさかの前山さんからのRINE。
【楽しかったよ】
【そうかそうかw】
何故か笑われた。
【デートお疲れさん】
【デートちゃうわ】
と返信したものの、自分も少しデートと思ってしまっていたことは事実。けれどそれをバカ正直に言う訳が無い。
その後、前山くんと数回やり取りをし会話を終える。
はぁ……やっぱり陽キャだなぁ。でも、陽キャなのに嫌な感じが全然しない。陽キャにも色々な種類の人がいるんだなぁ……。
《15日目》
さて、またまた憂鬱な月曜日がやってまいりました。
頑張って体を起こし学校に行く。
教室に入り、自分の席に着くと三上さんがこちらに気付き近寄ってきた。
「ねぇねぇ、映画どうだった!?」
前山くんと同じで三上さんもかよぉ……。
まぁ、それも無理は無い。国語の時間、4人ですごろくをしている時に映画に行く事を2人は知っていたんだから。
三上さんの場合、映画どうだった?とは2つの意味で取れる。
1つ目はただ純粋に映画が面白かったかどうかを聞いている。
2つ目は村田さんとの映画どうだった? というパターンだ。
けれど三上さんは『君が星になっても』が好きっぽいから恐らく前者だろう。
「面白かったよ」
当たり障りの無いような返答。
「どこが面白かった!?」
食い気味で聞いてくる三上さん。本当に『きみほし』が好きなんだなと言うのが伝わってくる。
それから俺と三上さんは映画の感想、そして原作の感想を周りに気を付けながら語り合った。
周りに気を付けたのは俺達の会話が聞こえてネタバレされたっていう人が出ないようにだ。
三上さんとは結構仲良くなれそうだ。同じ本好きということもわかった。
今度面白かった本紹介してみよ……。
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