第24話 見られたらマズいもの

 

 鈴木と妹が両手で買い物袋を抱えて戻ってきた。


「2人ともお待たせ〜」

「やけに遅かったな。なにか見つからないものでもあったのか?」

「妹ちゃんとお話してたら買い物のこと忘れちゃってさ」

「もー鈴木さんはおっちょこちょいなんですからっ」


 一緒にいたお前が言うな。


「ごめんごめん。ついね」

「もー」


 鈴木と妹は昔から仲良いよなぁ……。

 もうこいつらで付き合ってくれた方が色々と丸く収まると思うんだが。


「ちなみに2人の方はどうだった?」

「神乃さんがいてくれたからすぐ買えた。ほんと助かったよ」

「あまちんに褒められても嬉しくねーし」

「なんだ、まださっきのこと怒ってるのか」

「え? 何かあったの?」


 鈴木が不思議そうな顔をして聞いてくる。

 女子に脱●ゲーやらせたとか言ったらドン引きされるよなぁ。


「別に大したことはない。俺たちは買い物してただけだし(大嘘)」

「ほんとー? ねー神乃ちゃん教えてよー」

「なんもねーしっ」

「でも顔赤いよ」

「赤くねえしっ」


 神乃さんの顔は確かに赤かった。


「まさか……天野くん! ボクたちが居ないところで神乃ちゃんに」

「なんもしてねーよ」

「うわー、おにぃのえっち」

「なんもしてねぇって! なぁ神乃さんの方からもちゃんと言ってくれよ」

「あまちんのえっち」

「おいっ」


 結局、誤解を解くために俺は弁明する羽目になり、いつものように鈴木にいじり倒された。


 ✳︎✳︎


 買い物袋を持ちながら4人で俺の家へと向かう。

 俺はスーパーで解散にしたかったのだが、鈴木の圧に負けて結局、鈴木と神乃さんが俺の家に来ることになった。


「女の子に脱●ゲームやらせるなんて、天野くんはただのMだと思ってたけど結構やるねー」

「俺も知らなかったんだよ。神乃さんも確認せずに小銭投入しちゃうし」

「そこはあーしもごめんだけどさ、そもそもこんな誰でもやれるゲーセンにあんな破廉恥なのを置いてるのがやべーし」

「ここのゲーセンはマニアの店長が集めた筐体置いてて、元を取るために少しでも稼げたらなんでも良くなってるから教育に良くない筐体も結構あるんだよ?」

「なんでお前はそんなことまで詳しいんだよ」

「ボクの暇つぶしエリアの一つだったからねー」


 鈴木の暇つぶしエリア……これは、鈴木が不登校時代に暇をつぶしていたエリアのことをいう。

 鈴木は軽く言っているが、きっとあの時のことは思い出したくはないだろう。


 俺の家に着くと、「ただいまー」と言いながら鈴木が家に入った。

 既に(鈴木によって)洗脳済みの母が「おかえりなさい鈴木さん」と快く迎えた。(狂ってる)


「あら、そちらは?」

「同級生の神乃さん。たまたまスーパーで会ったから」

「あの、お邪魔しますっ」

「あんたが鈴木さん以外の女の子連れてくるなんてねぇ」

「鈴木は女じゃねー」


 俺は鈴木と妹に神乃さんを俺の部屋へ案内するよう伝え、俺自身は茶を淹れにキッチンへ向かった。


「天野くん、隠さないとヤバいものとか無いのー?」

「ねーから。さっさと行け」


 俺の部屋にあいつらだけ行かせるのはなんか嫌な予感がする……と前までの俺だったら思っていたが、今回の俺は違うっ!

 あいつらは俺をイジるネタを探すかもしれないが、俺は昨日と今日でエロ関連のものは鍵付きの屋根裏部屋に仕舞っておいた。

 つまり今、俺の部屋には健全なものしかないのだ。


「やましいものは全く無い。あいつらの残念そうな顔が目に浮か——」


 その時、フラッシュバックした記憶。

 あれ、待てよ。

 何か一つ、エロとか関係なく、バレたらまずいものが……あったような。

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