第20話 天野くんはガチ(?)
駅に戻ってきた頃にはすっかり夜も深まり、クリスマスの眩い輝きは段々と落ち着いてきていた。
「甘神、家まで送るよ」
「別にそこまで心配しなくても大丈夫なのだけど」
「ダメだ。高校であれだけ人の目集めてんだから心配にもなるだろ」
「……そう? じゃあお願いしようかしら」
俺は甘神に案内されながら彼女が住むマンションへと送ることにした。
「天野くん、ちゃんと男の子してるわね」
「揶揄うなって。これくらい当たり前だろ」
こんな世間が浮ついた日だ。甘神は人を惹きつけるし、ちゃんと家まで送らないとな。
「甘神は一人暮らししてるんだっけ?」
「そう。祖母のマンションの1室を借りて住んでるわ」
祖母と同居するのではなく、そのマンションの1室を借りているというところに、何かあると思ったが、それ以上聞くのはやめておいた。
甘神にも色々あるっぽいもんな。
「自炊とか大変じゃないのか?」
「私は料理も完璧なのだから、問題ないわ」
「そ、そうだよな」
「……でもね天野くん。今日は久しぶりに誰かと食事ができて嬉しかったわ」
「そっか、そりゃ良かったな」
なんか急に正直になられると、照れ臭いな。
「ねぇ……」
甘神が俺の手を引く。
「良かったら、泊まっていかない?」
と、泊まっ⁈
ダメだ! お、同じ手に乗るわけにはいかない。
「そうやってすぐ俺のこと揶揄いやがって。遠慮しとくっ」
「じゃあせめて、お茶でも……どうかしら?」
「ダメだ」
「じゃあ、じゃあっ」
「なんかお前、おかしいぞ」
「……」
「どうした?」
「……まだ、一緒にいたいの。これで別れたら次は5日後になってしまうから」
そんなこと言われてもな。電車の時間もあるし。
「……甘神、いつでも連絡してくれ。できるだけ時間空けておくから」
「本当?」
「あと、そんな甘えた声出すな。キャラ崩れてんぞ」
「自然体でいいと言ったのはあなたなのだけど」
甘神のマンションに着き、俺と甘神はエントランスで別れた。
「またね、天野くん」
「おう」
小さく手を振る甘神を見送って、俺はまた駅へと向かった。
俺は今日という日を一生忘れないのだろう。
頭の中が甘神で一杯になる。
「甘神……俺もちょっと、寂しいよ」
冬の夜風が先程まで温まっていた俺の心を冷ましていく。
家に帰ったら妹が俺の帰りを待っていてくれた。
「おにぃおかえり」
「ただいま」
「どうだった? プレゼントは何渡したの?」
「別に大したもんじゃねーよ」
「一応アドバイスしてあげた身だから気になるのっ。だから教えてよっ」
「た……タンザナイトのネックレスだよ。その子の誕生石がタンザナイトだったから」
「……え?」
「なんだその反応。アクセサリーにしろって言ったのはお前だろ?」
「おにぃ……ちなみにその子とは、付き合ってないんだよね?」
「あぁ」
「それなのにそのプレゼントって。なんかガチすぎて引くんだけど」
妹に言われてやっと気づいたが、確かにちょっと……重すぎたかもしれねぇ……。
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