第16話 クリスマス準備
甘神とクリスマスを過ごすことになった俺。
プランは俺に決めて欲しいと甘神に言われ、この冬休みに入ってからずっとクリスマスのプランを考えていた。
そしてついにそのプランが完成し、残りわずかだったディナーの予約も完遂した。
俺はそれで満足して、クリスマスまでの時間を好きなことして無駄に浪費していたのだが……クリスマス前日。
この日になって、俺はあることに気がついた。
「……妹、一つ聞きたいことがあるんだ」
妹の部屋にノック無しで入ると妹はいつも通りBL本の執筆作業をしていた。
「なによおにぃ。もしかしてバックが怖くなった?」
「だから俺と鈴木は付き合ってない」
「じゃあ何?」
「えーっと、さ」
俺がもじもじしていると、妹は作業を一旦止めて俺の話を聞いてくれる。
「実は明日、女子とクリスマスに」
「……おげぇー!」
「おい妹! まさかお前リア充オーラで」
「おにぃが……NL」
「それは前からずっとそうなんだが⁈」
「おげぇー」
ゴミ箱に吐き続ける妹に構わず俺は話を続ける。
「別にその子とは付き合ってるとかじゃねーんだが、クリスマスだし何かプレゼントとか、必要なのかなって」
「うわぁ、おにぃって何も分かってねー。非リアのあたしでも、プレゼントは買うよ、流石に」
「そういうもんなのか⁈」
「だって仮に相手がプレゼントを持ってきた時に自分が手ぶらだったらダサすぎるって」
「そ、そうだよな」
妹の言う通りだ。
どうなるかわからないが、持って行って損はないということか。
「……おにぃはその子のこと、本気なの?」
「……いや、分からん」
「好きか嫌いかと言えば?」
「……す、好き寄りだけどさ」
「正直になってよ。本気度によってプレゼントだって変わるのに」
「すまん、でもな妹。相手が絶対的な存在すぎて」
「絶対的って、やっぱ鈴木さん?」
「鈴木もネット界隈ではそうだが、今回は違くてだな!」
あーもう、すぐ話の腰を折りやがって。
「なんでもいいから、とにかく無難なプレゼントを教えてくれ!」
「無難ねぇ……クリスマスだし、普通に友達に渡すなら高い洋菓子とかちょっと洒落たものがいいとは思うんだけど。異性の子でクリスマスに会うくらいの仲なら、かなり難しいね。身に付けて貰えるアクセとかの方がいいかも?」
「あ、アクセ?」
「アクセサリーっ、ほらペンダントとかブレスレットとか」
「あぁ。そうか……」
「おにぃ、今こそあの灼熱の夏休みに死ぬ気で溜めたお金を使う時だよ」
妹の言う通り、今年の夏休みに俺は実家の農家に飛ばされて重労働を課せられた。
30日間、自由を全くもらえず泣きながら働いて溜めた金を俺はずっと使うことができないでいた。
しかし、あの苦労の日々が伏線になっていたとは。
使うんだな、今、ここでッ!
「おにぃ、頑張って」
「妹、ありがとうな」
俺はプレゼントを買うために家を飛び出した。
アクセサリーとか洒落たものを買うには街に行くしかない。
俺は電車に乗って4駅先にある都会へと足を踏み入れたのだった。
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