第3話 神乃楓
俺のクラスで甘神と人気を二分する
たわわな胸元とその明るい性格で、甘神とは対照的な存在として男子から人気を集めている校内ミスコン出場者。
毎日のように先生から注意されてるメイクと茶髪のせいで悪いイメージしかない。
「神乃さん、何をして」
「天野くんさ、常識人のフリして結構やるねぇ」
「フリとかじゃなくて常識人なんだが」
「なに? 口答えするなら甘神さんと楽しそうにデートしてる画像、ばら撒くよ!」
デートじゃないし、楽しそうにもしてねぇ。
しかしやっばいなぁ、変な噂が流れたら俺はまだしも甘神に悪いよな。
「ばら撒かれたくなかったら、あーしの質問に」
「……プライバシーの侵害、名誉毀損、肖像権の侵害、諸々ヤバいことしてるけど大丈夫?」
「ほへ?」
「ばら撒くって言うなら、次会う時は法廷だね」
「ちょ、ちょっと待って! 待った!」
「何か?」
「ご、ごめんなさいっ! マジで出来心だったつーか」
神乃さんはその場に跪いて、スマホを差し出す。
ま、まさか、こんなガキしかビビらない脅しが効くとは……どんだけ馬鹿なんだ。
「あのさ、俺だけが被害受けるなら構わないんだけど、甘神さんまで巻き込まれると厄介というか。なんでこんなことしたの? 甘神さんが嫌いだから?」
「ち、ちげくて!」
「ちげーし」と「違くて」が混ざるくらいには焦ってるようだ。
「恨みとかじゃ無くて、その、なんていうか」
「?」
「あーし、甘神さんと友達になりたかっただけで」
甘神と、友達になりたい……?
「なんで?」
「なんでって……。甘神さんは、みんなの憧れだし。あーしなんかより、断然人気あるのに全然友達とか作らないから凄いキョーミがあって」
たしかに甘神さんが友達といるところって見たこと無いな。
あれだけミステリアスな人だから俺と2人の時の表情も、限られた人にしか見せてないのだろう。
「天野くん……いや、あまちん!」
「あまちん⁈」
「あまちんはどうやって甘神さんと友達になったん⁈」
「え、えぇーっと」
どうしてだっけ……。
「甘神さんに呼び出されて、なんか買い物についてこいって言われて、その流れで今日も付き添いで」
「あまちんってパシリなん?」
「パシリではない、断じて」
でもよく考えたら……俺ってただの付き添い人に過ぎないのか……?
「じゃあ、あまちんは甘神さんのこと好きなん?」
「好き……とはまた違うような」
「へー。ま、なんでもいいか。とにかくあーしも友達になりたいの! できれば上手い感じに話通しておいてもらえね?」
「い、いいけど、その代わりこの写真は消させてもらうから」
俺は先程渡されたスマホの写真から俺たちが写っているものを削除して、スマホを神乃さんに返した。
「色々とごめん、あと、あんがとねあまちんっ」
「礼を言われるようなことはしてないけど」
「そっだ、甘神さんのことまだまだ聞きたいし、lime交換しね?」
「い、いいけど」
limeの連絡先を交換した後、俺たちは別れた。
そういえば甘神さんの連絡先、知らなかったな。
今度、聞いてみたら教えてくれるのだろうか。
「ほんとあんがとねー、あまちん」
別れてからもこっちに手を振る神乃さん。
甘神さんと繋がりが持てるのが、余程嬉しいのだろうか。
しっかし、こう見ると甘神と神乃さんの性格って真逆過ぎる。
例えるなら月と太陽。いや、光と影……どーでもいいか。
俺はやっと帰路を歩き始める。
ここ数日で学校一の美女とクラス一の陽キャ女子に絡まれるというイベントが連続して発生しているが、一体何事だ。
俺はこの半年、普通の学園生活を送っていたはずだ……。
「なんか……胃が痛くなってきた」
顔を青くしながら、鞄から取り出したヘッドホンを耳に当て、歩き出した。
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