第4話<消える>
ウサギ先輩は、いま担当している舞台でトラブルが多発しており、残念ながらアヅマ探しに加わることができない、と申し訳なさそうに言った。
ターミナル失踪事件(と命名することにする)について研究しているという友人にアポイントを取ってもらい、俺たちはカフェで別れた。
「あいつはぼんぼんで、働かなくたって生活に困っていないから、いつ訪ねても家にいるはずだよ。実家暮らしなんだ。この後にでも、予定がないなら行ってみるといいよ」
オミくんに会えたら、また鍋パーティーをしようって言っといて。
ウサギ先輩の言葉通りに、俺はその日のうちに先輩の友人、ウシダを訪ねることにした。
住所と電話番号はウサギ先輩から預かっていた。電話をかけてみると、受話器の向こうから、こもった声で、歯切れの悪い返事があった。
「来たっていいけど、いま直ぐにしてあげられることはない、というか」
それでもかまわない。俺が言うと、三時間後に家に来て、夕食でも食べていけ、とウシダは困ったような声をして言った。
動き回っていないと気がおかしくなってしまいそうだった。
じっとしていると、アヅマの顔が頭をよぎり、あの夕方の涙や、俺が浴びせた言葉や、汗のにおいといった記憶が全身から噴き出して、叫びだしたくなってしまうのだった。
ウシダの家は街の端の、山の麓にある。最寄り駅まで、電車に乗って四十分ほどである。降りたことのない駅なので、早めにいって散策でもしてみようと思った。
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