第71話 視界が歪む
「なぜわかった?」
やっぱり。
「あ、いえ、その、えっと、もしかしたらそうなんじゃないかなって思って聞いてみただけです」
「ほう。なかなか鋭いな。その通りだ。私に関係のある事だ」
「ここで暴いちゃったら先まで行かなくてもってやつですよね? カーリー! 逃げるぞ!!」
カーリーの手を引いて走り出そうとしたその時、
ガシッ!
腕を掴まれた。
おそるおそる振り返ると、男が無言で睨んでいる。
ヤバい!
これは逃げられないパターンだ!
どうする?!
フードが外れ、男の顔があらわになる。
男の口には上下に牙があり、その口を開けニシハタに襲いかかろうとしている。
「うわーーーーーー!!!!」
「ニシハタ!!」
「カーリー! ダメだ! 来るな!」
カーリーはニシハタを守ろうとして男に飛びかかった。
「カーリー!」
しかし男の力が強く、ニシハタの腕を掴んだまま離さない。
カーリーはその男に噛みついた。
「グワァーーーーーー!!!!」
カーリーに噛まれた瞬間、男は叫び声を上げ、カーリーを振りほどき、そのまま後ろに倒れた。
「カーリー! 大丈夫か?!」
カーリーを抱きかかえ、森の方へ走り出す。
後ろを振り返ると、男が立ち上がりこちらを追いかけてくるのが見えた。
森の中に入り、息を潜めて追手をやり過ごす。
しばらくすると男の声が聞こえなくなった。
ほっと胸を撫で下ろす。
カーリーはまだ目を覚まさない。
いったいどうしてしまったんだろう。
身を隠しながらしばらく様子を見ていると、カーリーの目が開いた。
良かった、と胸をなでおろす。
でも様子がおかしい。
「カーリー、おい、カーリー。しっかりしろ! なあカーリー!」
その声に反応するようにカーリーの右手を伸ばしニシハタの頬に当てる。
なんだ?
何がしたいんだ?
するとニシハタの視界がぐにゃりと歪み、違和感を覚える。
次の瞬間、ニシハタの見ている世界とリンクして別の画像が映し出される。
「な、なんだこりゃ?」
そうこうしていると体が勝手に動き始める。
そこにはカーリーの意志があり、ニシハタの体を動かしているのだ。
カーリーはそのままニシハタの体を操って歩き出した。
やがて森を抜けて、ニシハタは教会へと辿り着いた。
そして教会の扉を叩く。
「カーリー、おい、カーリー! 返事をしてくれ!」
しかしニシハタに抱えられたままカーリーは身動き一つしない。
そして後ろには、先ほどの男が迫ってきている。
「くそっ! 開けてくれ! 扉を開けてくれ!!」
ガチャリと音がして、扉が開かれ、中に入ろうとしたところで男に追いつかれ、男に肩を掴まれる。
カーリーを抱きかかえているニシハタは抵抗できず、なす術がない。
男はカーリーに視線を移し、じっと見つめたかと思うと、カーリーに向かって手を伸ばす。
「おい! やめろ!! カーリーに触んな!!」
必死に抵抗するもカーリーは男の手の中に納まってしまった。
「クソッ! 返せ! 返せよ!!」
男の牙がカーリーに向けられる。
「カーリーーーーー!!!」
血しぶきが上がる。
それは紛れもなく自分の体から噴き出しているものだった。
「うわぁあああああ!!」
絶叫と共に意識が薄れていく。
なんなんだ?!
なんなんだよこれ
タニさんに知らせなきゃ
タニさんに
タニさん
ごめん
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