第70話 NPCからの

 ところが、いつまで待ってもアウが戻る気配がない。

 日が暮れても戻らないアウを心配したニシハタはカーリーと共に探しに行くことにした。


 しかしアウの居場所に見当がつかない。


「なあカーリー、アウはどうしちゃったんだろうな?」

「わかんなーい」


「うーん、このままゴールを目指すか、アウを探しにいくか。どうする? カーリー」

「うーん、わかんなーい」

「うん、安定の、だな。んじゃあまあ、ここで待ってても仕方ないし、ゴールを目指しながらアウを探していくって感じでいくか」

「うん」


 しばらく歩いていると、目の前に黒い影が立ち塞がる。


「おい、お前たち」

 声の主は全身黒ずくめの男だった。


「お前たちは何者だ? なにをしている?」

 歳は四十代くらいだろうか、男はフードを被っており顔はよく見えない。

 声は少し掠れている。

 そして腰には剣を佩いてはいている。


「俺はニシハタと言います。こっちはカーリーです。あなたは? どうしてここに?」


「質問しているのはこちらだ。答えろ」

「はい。俺達は教会に向かうところです」


「教会だと?」

「はい」

「ふむ。しかしこの先には今進めぬぞ」

「え? なぜですか?」


「この先の森に魔獣が現れたのだ」


「まさかのイベントですか? ええ? スリプカアポってそんなイベントがあるんです?!」

「なにを言っておるのだ?」

「ああ、いえ、なんでもありません。こっちの話です。すみません」


 困ったなあ。早く戻りたいんだけど、いままでの話を考えると、ここで死んだら現実世界でも死ぬってことなんだよなあ。


 自殺で処理された本田太一、カーリーと一緒にいて上から落ちた。おそらくその際に心不全で亡くなっている。

 浅井町で発見された森田孝行、この人については不明。

 中迫町で発見された焼死体、清水智子はウスと一緒にいて燃やされた。

 となると、なんとか生きて戻らなければタニさんに伝えられない。



「まあいい。とにかく今は魔獣がいて通れない。迂回して進むしかあるまい」

「迂回するとどのくらい遠回りになるんですか?」


「そうだな。ここからなら、半月はかかるだろう」

「ええええええ?」

 現実の時間との差はわからないがここで半月の遠回りはつらい。


「なんとかならないの、カーリー?」

「んー、わかんなーい」


「ああ、そうだよなあ。で、あなたはなんでそれを見ず知らずの俺たちに教えてくれるんです?」


「ふん、それは簡単なことだ。私はここを通る物にそれを伝えるのが役割だからだ」

「あー、NPC! そういうことかあ」

「また、わからぬ言葉を発するな」

「あ、すみません」


 そうか、NPCかあ。睡眠管理アプリの中のゲームだから、キャラがいるってことか。

 となるとここはNPCに素直に従わないとってことなんだろうけど、イベントとしては倒すルートがあるんじゃないかなあ?


 でもなあ、勝てる気がしないしなあ。

 うーん、どうしようかなあ。


 ふと男を見るとフードの隙間から口元の端からは牙のような歯が見え隠れしていた。


 あれ?

 もしかして、この人って。


「あの、もしかしてこの先の魔獣ってあなたに関係するんじゃ?」

「なっ?!」

 男は驚いた様子でニシハタを見つめた。

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