第68話 アウとテト

 カーリーの指した場所はテトの世界の中でも西洋風の建築物が並んだエリアだった。


「ほほーい! ここいらへんは特に変化がないみたいですねえ」

「そうなんだ。でもなんでカーリーはここに教会があるって思ったんだろう?」


「うーん、答えを言っちゃあだめなんだよ? 答えの近くなの!」


「そっか、そうだったな。じゃあここから答えに近づいていかなきゃいけないんだな」


「たしかここは?」

「ん? どうしたんだアウ?」


「いいええ、なんでもないですよお! ささ、カーリー、ニシハタさんをご案内して差し上げなさい」

 アウはそう言うと天使の羽根を使って上空に舞い上がる。


「ねえねえ! アウー! どこ行くのお?!」

「私はちょっとこの辺りを見て回るのですよお。ニシハタさん、カーリーが案内しますのでご安全に!」


「え? あ? ええ?!」

「あーあ、行っちゃったあ」


「うん、行っちゃったなあ。まあ、カーリーが案内してくれるなら大丈夫か。よろしくな」


「うん!」


「ここはなんだか見たことがある景色ですねえ。いつだったか思い出せませんが」

 アウは上空を旋回しながら西洋風の街並みを見て回る。


「いつだったんでしょう? 私はテトの世界には来たことがない、とするとこの世界をなぜ知っているの? いや、憶えているの?」


(アウ)


「え? どなたですかあ?!」


(テトだ)


「ほほほーい! びっくりしましたあ!! テトさん、お話しできるんですかあ?! あれ? テトさん、どちらにいらっしゃるので?」


(アウ。今はニシハタについていなくともよいのか?)


「え、ええ。とりあえずカーリーに任せてきましたからあ。ところでテトさん。少しお伺いしたいんですよお。私、テトさんの世界には来たことがないはずなんですけどこの景色に見覚えがあるんですよお。なんででしょうかねえ?」


(そうか、見覚えがあるのか)


「ええ。そうなんですよお。でもどうしても思い出せないんですよお」


(今、そちらに行く)


 空間が歪み、キメラの翼を羽ばたかせたテトが現れる。


「ほほほーい! テトさん、お久しぶりですねえ」


(ああ、そうだな)


「ところでどうして私のところに来られたので?」


(お前の様子がおかしかったからだ)


「おかしい? 私が? いえ、そんなことはありませんよお。いつも通りです」

(そうか)


 次の瞬間、テトの一つ、ライオンの頭が吠える。


 グルオオオオ!!


 ライオンの口が大きく開き咆哮とともに白い光がアウに向かって放たれる。


「え?」


(すまんな、アウ。これも三角の決められたことだ)


 白い光に包まれたアウはそのままライオンの口に吸い込まれていく。


 光が収まった後、テトの身体の一部が盛り上がり頭の部分からウサギの耳が現れる。


(よし、これで準備は完了。さて、次はあの方ですねえ。ニシハタさんはどんな答えを出してくれるのでしょうねえ?)

 アウの消えた空を見つめながらテトは微笑む。


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