第59話 会議室へ
「考えたくはねえが」
ウスが重い口を開く。
「クラがこの世界に割り込んだってことか」
「なんで? どうして?」
「じゃなきゃ説明がつかねえ。だがどうやってこの世界を作ったんだ? ここは俺の世界だぞ。なのにこいつらは普通にしゃべったりしてんじゃねえか」
「通常割り込めないの?」
「ああ、当たり前だ。七頭がそれぞれの世界を作るのがルールだ。それを破るものはいないはずだ。もしクラがそれを破ったとしたら」
「どうなるの?」
「わからねえ。今までこんなことは起こる事さえ考えられなかったからな」
「じゃあ、どうすれば?」
「決まってるじゃねえか」
「え?」
「元に戻す!」
「ちょ、ちょっと待ってよウス! そんなことしたらどうなるかわからないじゃない!」
「だがこのままではゴールの教会にたどり着けねえ。そうなったらどのみち終わりだ」
「でもどうやって?」
「それをこれから考えるんだよ」
「ウス?」
「ああ、おめえたち、悪い事は言わねえ、山には入らねえほうがいいぞ」
「悪いな。どうしても行かなきゃいけねえんだ」
「無理に止めようとは思わねえが、もうすぐ山は噴火するぞ」
私たちはウスの背中に乗って再びスミルナ山の探索を始めた。
「なにこれ?」
「さっきの男が持ってた斧じゃねえのか?」
「うーん、でも何か違う気がするんだけどなんだか気になる」
「持って行ってもいいんじゃねえか?」
「うん、そうするわ」
「でも、さっきの人、NPCにしては受け答えが自然だったわね。ってまあウスがこれだけ意思疎通できてる時点でNPCでもあれくらいは普通か」
「なにをわけのわかんねえことを言ってんだ、トモコ、行くぞ!」
「はいはい。でもねえ、ウス。このままやみくもに進むとクラの思い通りなんじゃないかな?」
「どういうことだ?」
「私ね、思ったことがあるの。このゲームはどうもおかしいわ」
「何がだよ」
「だって、ほら、よく考えてみてよ。はじまりもウスが始めたわけじゃない。途中からもこんな状況になってる」
「だからなんだよ?」
「これって最初から仕組まれてるわよね?」
「確かに不可解な出来事が続いている。裏でなにかが起きている可能性はあるがまさか三角が?」
「わからないわ。だけど本来のゲームのルールから逸脱してるんでしょう?」
「ああ、それはその通りなんだが。そうなるとどうすりゃあいいんだ?」
「ねえウス。私を置いてどこかにいったときがあったじゃない?」
「ん? ああ、会議室にいったな」
「それって今からでも行けるの?」
「ああ、おそらくな」
「じゃあそこに行って確かめればいいんじゃない?」
「そうなるとトモコ一人をここに置いていくことんなっちまうぞ」
「大丈夫よ、ここで待ってるから」
「わかった。じゃあ少しの間会議室に行ってくる。絶対に動くなよ?」
そういうとウスは広げた空間の中に入り込み姿を消した。
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