第60話 会議室にて

「まさかお前がここにいるとはな」


 会議室にイルカと太陽のぬいぐるみが向かい合っている。


「おや、ウスさんではないですか! ご無事だったんですね。心配していたんですよ」


「クラ、どうなってんだ? なんで俺の世界に」

 ウスはクラに激しく詰め寄る。


「ああ、ウスさん、順を追って説明しますので少しお待ちください。ウスさんがいなくなった後のこともお話しなければなりませんしね」

 落ち着いた態度で答える。


「いいから早く説明しろ!」


「せっかちですねえ。わかりました。ウスさんが行方不明になった原因はわかりませんが、その後、テペさんも行方不明になりました」


「なんだとっ! テペもか?!」


「はい。テペさんの世界の協力者は帰ってしまいましたのでねえ。まあそのうち現れるでしょう、ウスさんのように」


「てめえ! 俺の世界でゲームが勝手に始まった! んで、その後、気づいたら俺の世界だったが俺の世界じゃなくなってた! どういうことなんだ!?」


「まさかウスさん、それを私がやったと?」


「てめえ以外に誰がこんなことができるんだ?! アウやカーリーにはそんな真似は出来ねえ。テペやネロはそんなことはしねえ。って考えたらお前かテトしかいねえ」


「それで私だと? ひどいですねえ。私は七頭と三角を繋ぐ役割を果たしてきたんですよ、その私が? そんなことをしてなんの得があるんです?」


「わからねえ! わからねえがそうとしか考えられねえ」


「で、どうするおつもりです?」


「元の世界に戻す方法を教えろ!」


「そう言われましても、私には身に憶えのないことですので」

「てめえまだ言うか!」

「落ち着いてください、ウスさん」


「落ち着いていられるか! 向こうでトモコが待ってるんだ! 早く戻らねえと」

「早く戻らないと? どうなるんです?」


「てめえ、まさか?!」


「クックックックック。アッハー! そうなんですよお、ウスさん! 今回の実験は二人が離れた場所にいる時に片方が帰るとどうなるのかを試したかったんですよお!」


「クラ?! てめえ、どうしちまったんだ?!」


「なにがです? 私は至って正常ですよ。ああ、いい機会ですからお教えしましょう、まず初めに同化したのはあなたです、ウスさん。まさかこんなことが起こるとは私は聞いておりませんでした。三角の皆様もどうして教えてくれなかったのか」


「な? なにを?」


「そうです。あの時あなたの世界に干渉したのは私ですよお。申し訳ありません、勝手にゲームを始めてしまいました。でも仕方なかったんですよお、私の協力者との同期がうまくいかなかったんですから」


「うまくいかなかった?」


「ええ、わたしの所にきたのはひどいやつでねえ。動きたくないだの死にたくないだの本当にどうしようもないやつでした。ですので早々にね、終わらせたんですよ。私が協力するんですから、ゴールに到達していただかなければ。それでなくとも今回からは直接の協力ができるのですからね! 優秀な私、そう、七頭の中でも優秀な私の協力があってこそゴールの教会にたどり着けるのです。他の七頭の協力により私より先に教会への到達者が現れてしまったら」


「おい、クラ! お前はなにを言ってるんだ? 七頭のルールを忘れちまったのか?」


「いいええ! とんでもない! この優秀な私が七頭のルールを忘れるわけがないじゃありませんか?! あなたは私をバカにしているのですか?」


「いや、しかしどうやって干渉したんだ?」

「ふん! やはりわかりませんか? まああなたももうすぐ帰ることになりますから、まあ、どこに帰るのかは知りませんが」

 クラは不敵に笑いながらウスを睨みつける。

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