第58話 夢の続き
「気がついたか、トモコ」
「え、ええ。ウス、ここは?」
「わからん。ここは俺の世界だが俺の世界じゃねえ」
「え? どういうこと?」
「この世界は俺の世界を元に作られてるんじゃねえ。まったく違うところから引っ張ってきて無理やり繋げたような感じだ。だからいろんなところに違和感がある。ここはおそらく俺の世界とは似てはいるが別物だ。それにあの海。あんなもん見たことも聞いたこともないぜ」
「たしか私たちは」
「ああ、スピード出して突っ込んだ。教会に向けてな」
「教会にはたどり着けなかったってこと?」
「わからねえ。ここが教会の中なのかも知れねえしそうじゃねえのかも知れねえ」
「そっか。とりあえずこの辺りを探索しないとだね」
「そうだな。ここでじっとしていても何も変わらねえからな」
私たちはウスに乗ったまま移動を開始した。
どこを見ても同じ景色が続く海中。
遠くに見える岩肌。
どこまで行っても続く同じ風景に嫌気がさしてくる。
「ねえ、ウス」
「ああ、同じ景色が続いてるな」
「ここが<スリプカアポ>の作り出した世界ならプログラミングでループさせてるってことか」
「またわからねえことを言い出したな」
「もう! 少しはまじめに考えてよ!」
「そうは言ってもトモコの考えてることの半分も理解できねえぞ。なんだそのぷろぐらなんとか」
「プログラミング! 私はね、これでも結構すごかったんだから」
「ふん! それがなにかも分からねえのにすごいかどうかなんてわかるわけがねえだろう?」
「はぁ。まあいいわ。その辺りは私が考えるからウスはとにかく進めばいいの!」
「ふんっ!」
「あっと。ちょっとストップ!」
ウスが止まってくれたので、背中から飛び降りて前に出る。
「どうしたトモコ」
「ウス、見て」
「ああ? なんだそれ」
「足跡」
「誰かいるってこと?」
「かもしれん。ただの動物って可能性もあるが」
「じゃあ調べないとね」
「ああ」
私たちはその跡を辿りながらさらに先に進むことにした。
「おい、トモコ。あれは」
「うん、人だよね」
「おーい! あんたらこんなところで何をしている?」
目の前に現れたのは大きな斧を持った屈強な大男だった。
「なんだよお前は」
「俺はこの先の村に住んでいる者だ。お前らは見慣れぬ顔だな」
「ああ? なんで俺の世界で俺の知らない奴がいる? どうなってんだ?!」
「ウス、やっぱりここはあなたの世界じゃないみたいよ」
「あん?!」
「だってあなたの世界は海のはずでしょう? あれはどう見ても山だわ」
ウスが驚くのも無理はない。
私たちの眼前に広がっていたのは大きな山の麓だったのだ。
「何を驚いてんだ? ありゃあスミルナ山だ。おめえたち、まさかスミルナ山に入ろうとしてるんか?」
「いや、そう言うわけじゃあねえんだが、あの山は昔からあるのか?」
「あったりめえだろお。あんな山が昨日今日できるわけねえだろう、おかしなこと言うない!」
「あ、ああ」
「ねえウス、これって?」
「ああ、誰かが俺の世界に割り込んでやがるな」
「それってやっぱりクラ?」
ウスは答えない。
おそらくそうなのだろう。
クラの行動の意味がわからない。どうして彼はこんなことをするのだろうか。
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