第48話 適格者候補

「テペ隊長!」

「キミヨ、私から離れてはいけないぞ!」

「はい!」

 戻ってきたテペ隊長が叫ぶ。


「あの、ゲームのはじまり、ってどういうことですか?」


「ここからが本番ということだ。気を抜くんじゃないぞ!」

「はい!」


「よし! このまま一気に突っ込むぞ!」

 そう言うとテペ隊長は左手で自分の目を覆い隠すと、右手に持っていた剣で目の前の空間を切り裂いた。


 すると真っ二つに裂けた空間が光り輝く。


 そして、光が消えるとそこには大きな門が現れ、テペ隊長は馬の向きを変えると再び走り出す。


 敵は向かってくるテペ隊長に攻撃を集中させるが、テペ隊長の強者の二人によって阻まれる。


 テペ隊長はそのまま、勢いを落とすことなく進んでいく。


 キミヨが振り返ると、大隊のメンバーのほとんどが途中でやられている。

 強者も相手の強者に阻まれいるようだ。


「隊長! みんなが!」

「ああ。我らを先に進めるために戦ってくれている。キミヨ、これが戦場だ。我々が生き残るためには誰かを犠牲にしなければならない」


「そんな! みんな頑張ってるんですよね? なのに、どうして!?」

「それが戦争だ」


「そんな!」


「キミヨ、前を見ろ。今は私達を信じてついてきてくれた大隊の者たちの想いを受け止め先に進まねばならん」


「隊長!」


 すると急に視界が変化していく。


「あ、あれ? なんだか目が」

「どうしたキミヨ? おお、これは」

 キミヨの左目が黒く輝いている。それはまるでテペ隊長の左目の宝石のように。


「た、隊長、なんですかこれ、おかしいです。目がおかしいです!」


「同調してきたな。私の目もおかしなことになっている。そしてキミヨ、お前の思考が私に入り込んでくるのが分かる」


「ああ、これ、テペ隊長の思考ですか?」

「そうだ。今、キミヨの左目は私の左目に繋がっている」


「ああ、そうなんですね。なんか変な感じですね」

「そうだな。私もこのような事になったのは初めてだ。しかし、これが適格者への第一歩か。三角も考えたものだな」


「あの、これからどうなるんでしょう?」


「うむ、それが分からんのだ。以前のゲームで一人適格者候補は現れたのだが、勝手にゲームが始まってしまい行方知れずになってしまった」


「え? なんで?」


「うむ、すでに同化し始めているのでキミヨに嘘は通じないであろう。私は七頭の誰かが七頭の一人、ウスを陥れたのではないかと思っている」


「え?! 仲間じゃないんですか?」


「うむ。昨夜説明した通り、七頭は三角のしもべであり、同格だ。まあ今回のゲームで七頭の入れ替えも三角より示唆されたこともある。智慧のある者なら他の七頭を出し抜くこともあるやもしれぬな」


「そんな。で、テペ隊長はどうするんですか?」

「ん? どうするとは?」


「だって同化した人が狙われたんでしょう? 私たちも狙われるかもしれないじゃないですか!」


「ふん。まあ誰が敵であろうと打ち砕くまでではあるが、確かにキミヨの言う通り不意打ちもあるやもしれぬな」

 テペ隊長は少し考えると、馬を止めてキミヨの方を振り向いた。

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