第46話 不安の中で

「テペ隊長! 助けて!」


「おい、キミヨ! しっかりしろ!!」

「はっ。え?」

 気がつくと目の前にはテペ隊長の顔があった。

 周りを見ると、そこは食堂ではなく、塔の中の廊下。


「大丈夫か?」

「私は、私はどうしたら?」


「やはり、教会を目指さなければ、なのではないか? これまで誰も教会にたどり着いておらん。で、あればそこにたどり着かなければならぬのではないか?」


「でも、たどり着いてどうなるんです?」

「それは、三角の意志なのだ。教会にたどり着くことが三角の意志である。ならばまずはそれを成さねばならぬのではないか?」


「で、でも、もし、その、もし仮にたどり着いたとして。その先はどうなるんですか? 私は、私は死にたくないです。死ぬなんて嫌です」


「キミヨ、私たちは三角のために生きている。そしてその意志を遂行するためにここにいる」


「いやいや、ちょっと待ってくださいよ。おかしいですよ。こんなの。なんで私が? なんで私だけ? なんで私なの?! もう訳わかんないよ! 誰か! 誰でもいい、私を助けてよぉ!」


「落ち着けキミヨ!」

 私の肩を掴み揺すりながら必死に説得してくる。


 テペ隊長は悪くない。


「ごめんなさい。取り乱しました」


「キミヨにもう一つ伝えておくことがある。これから私とともに行動することになるが、その際、私とキミヨが同期するかもしれぬ」


「同期? どういうことです?」

「これまでのゲームで数人の適格者候補が現れている」


「適格者? なにそれ?」

「我ら七頭と同期し、我らの感覚と能力が共有される者が出てきているのだ」


「そうなんですね」

「キミヨは適格者としての資格があるようだ」


「はあ、そうなんですか」

「あまり驚かんのだな」


「驚いてますけど、なんかもう、どうにもならないじゃないですか。私がどうこうできる問題でもないんでしょう?」


「まあ、そうだな。しかし、この先、何が起きるかは分からん。常に警戒しておいて損はないと思うぞ」

「そうですね。気をつけます」


「では、作戦を開始する。伍長、第1騎兵大隊を全員招集しろ。ブリーフィングを行う!」


 テペ隊長が兵士に声をかけると、彼は敬礼をして足早に去って行った。

 それから程なくして、私達は兵舎の前に移動した。

 号令をかけると兵士たちは一斉に整列し私を紹介すると、兵士達は私に注目する。


「キミヨだ。彼女は我々の仲間であり、また、私達の目でもある。キミヨ、挨拶を」

 テペ隊長が私に合図を送る。


「あ、はい。えっと、キミヨです。よろしくお願いします」

 とりあえず、頭を下げてみる。


 すると大きな歓声があがる。みんな、私を歓迎してくれているのだろうか。

 

 よくわからないけど、悪い雰囲気ではない。

 私はほっとした。

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