第12話 ファイト?
「はぁ、はぁ。カーリー、こりゃ無理だぞ。さすがにこれ以上は登れないと思う」
「うーん」
「なんか他に手はないのかい?」
「ヒント?」
「ああ、ヒントをくれ!」
「うーんとねえ。うーんとファイト?」
「ファイト? ファイトってカーリーさんや」
結局、登る道は見つからず滝の横を登るしかない状況だった。
なんとかかんとか十五メートルほど登って一息つける場所に出た。
人が一人やっと座っていられる場所だ。
あと半分ほど登れば滝の上に出ることができる。
しかしここから落ちたらそれこそ帰ることになってしまう。
このアプリ内でも時間経過はあり、もうすぐ夜になる。
さすがに暗い中滝を登るのは不可能だと考え、今日はここで寝ることにした。
「なあカーリー、この上に登ってもまだ教会までの道のりがあるんだよな?」
「うん、そうだよお。でもでもタイチはすごいね。ここまで来た人もはじめてだよ」
「そっか。カーリーがお手伝いしてくれたからだろうな。ありがとな、カーリー」
「えへへへへ。そっかあ、ぼくがお手伝いしたからタイチはここまでこれたのか」
「さて、腹が減ったが、袋にはもう水も残ってないな。今日は我慢して寝るしかないか」
「ねえねえタイチ。はらがへるってなあに?」
「そっか、カーリーはお腹すかないよな。俺たち人間は何かを食べないと力が出ないんだよ。あ、袋の中にパンと水が入ってたろ? あれが力の元になるんだ」
「ちからのもと? かわってるね、人間って」
「あははは、そうだなあ。変わってるな。現実の俺も、だいぶ変わってるんだ。このアプリってそういうのも考えさせるのかな?」
「あぷり?」
「ああ、スリプカアポな」
「すりぷかあぽ?」
「なんだよカーリー、自分が登場してるアプリの名前も知らないのか?」
「んー、わかんないけど。でもタイチ。今からはじまるみたいだよー」
「ん? はじまる? って何が?」
「今からがほんばんだって、みんながいってるの」
「え? なに? どういう」
星空がうっすら見え始めた空が急に暗くなっていく。
轟音と共に地面が揺れ始める。
空に緑色の星が一つ、輝きを増しながらこのジャングルに近づいてくるように見える。
「カ、カーリー! なんだあれ! ありゃなんなんだ?!」
「うーん、わかんなーい」
「いや、あれはヤバいぞ。こっちに向かって落ちてきてるんじゃないか?!」
緑色の星はどんどん大きさを増していく。
緑色の星が近づくにつれ、地面の揺れも大きくなり、風も大きくなっていく。
地割れや落ちてくる星の音、風で吹き飛ばされた木々も見え始める。
ヤバい、マジでヤバい。
ここにいては危ない、そう思ったが、もう上にも下にも進めない。
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