第9話 うまく使ってゴールしろ
「なあカーリー」
「なあに?」
「この世界って広いの?」
「んー? わかんない」
「だよなあ」
だいたいのことはわかんない。
この調子だ。
もう数時間、歩いていると思うが教会はおろか人口の物もなにもない。
「カーリー。ちょっと休憩しようか」
「うん! いいよお」
そもそも本当にこのおさるのぬいぐるみ天使は俺の見方なのか?
わざと迷わせて連れまわしてるだけ?
そんな疑問が浮かぶが確かめる術もない。
俺はペットボトルの水を飲み、息をつく。
「カーリー。何かヒントになるような物とかないのかな? やみくもに教会を探せって言われてもこりゃあ無理だぞ」
「うーん。あ! そうだ! ヒントはいいんだってクラが言ってた!」
「おお! ヒントありなのか!」
「うん! タイチ、ヒントってなあに?」
「えええ?」
まて、ここ大事な気がする。
「ヒントって言うのはね、答えじゃないけど答えに近づけるもの、かなあ?」
「こたえじゃないのにこたえの近く?」
「うん、まあそうかな」
「そっかあ。こたえのちかくかあ! じゃあね、じゃあねえ!」
「うんうん」
よしよし
「教会の近くには川があるの!」
「川?」
「うん!」
「僕のベルガモン教会の近くには川が流れているんだよ!」
「そっかあ、川かあ。その川はこの近くなのかい?」
「うーん、それは答えの遠くだから言っちゃダメだよ?」
「そっかあ、それは言っちゃダメなのか」
「うん!」
よし、とりあえずゴールの教会の近くに川が流れ、その川はこの付近にはないってことだな。
聞き方しだいだな、こりゃ。
カーリーをうまく使ってゴールしろってイベントなのか、これ?
「カーリー、さっき他のみんなは他の世界って言ってたよね?」
「うん、そうだよ。アウやクラもそれぞれみんなの世界があるの!」
「そうなんだ。じゃあ、このジャングルがカーリーの世界ってことか」
「うん!」
「そっか。熱帯だから少し蒸し蒸しするけど、いいところだな」
「えへへー。ほめられたあ! タイチ、ありがとう」
「なんだよ、思ったことを話しただけだよ。現実の俺はヘマばっかでさ、夜もなかなか寝付けなくて。このアプリを入れてよかったわ、マジで。カーリーにも出会えたしな」
「ぼくもタイチにあえてよかったよ!」
「さて、それじゃあゴールの教会を目指すかなあ」
「うん。タイチ、あのねあのね。ここからは少したいへんかもー」
「お? そうなの? なにが大変なのかな?」
「んー、川がねえ、たいへんなの」
「んー、わかんないなあ。カーリー、ヒントをお願いできるかな?」
「あー、タイチ。ヒントかあ、答えにちかづくヒントね。んーとねえ、川はわたれるけどわたれないの」
「ん? それがヒント? 渡れるけど渡れない、か。わからんな。ま、そもそもまだ川を見つけられてないしなあ。んじゃあ川を探して歩くか」
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