部室、カップ麺
世の中、白と黒で綺麗に分けれるほど単純だったら良いのに
善と悪、正解と不正解、yesかnoで答えられたらいいのに
皮肉だが、私はどうもその曖昧な部分が好みとなってしまったが
「やっぱり、よくわかんねえことしか書いてねえな」
煙の手帳をパラ読みしつつ少年は呟いた
「…しっかし、こいつの鞄軽いな、置き勉してるんか?」
論争?した後、少年は腐れ縁であるダウナー系美少女の荷物を運んでいた
「多分部室だよな」
階段を登り、化学室の隣にある謎の小部屋に入る
ドアの上には『郷土文化研究部』と書かれた札があった
入った途端、香辛料の強い匂いが鼻腔を襲った
ズズズ、環境音が響く
8畳程度の狭い小部屋、ポツリと小窓が一つ、中央にテーブルと4本の丸椅子
そして、ラノベが大量に詰まった本棚
何よりも目を惹くのは、椅子に座って割り箸を持って、紙容器の麺を啜る彼女だった
華奢といい言葉がよく似合う細い手
もはや病気なまでに透き通る白い肌が綺麗だった
「おい、なんでカップ麺食ってんだよ?」
なんで電気ケトルがあるんだよ
「お腹、空いた」
当たり前な返答が返ってくる
「荷物置いてくなよ」
椅子の横に彼女の鞄を放り投げ、そのあと手帳をポンとテーブルに置く
「あっ…ありがと」
素っ頓狂な声が彼女が荷物のことを頭に入れて無かったことを示す
「手帳、読んだ?」
深い黒色の瞳が少年を覗き込む
「読むかボケ、人の黒歴史ノートなんて」
咄嗟に少年は嘘を吐く
「む、黒歴史ノート、じゃない」
気に障ったのか強めな語気
「じゃあ、なんだよ?」
ぶっきらぼうな質問の声
「創作ノート」
言い換えを要求する煙
「世間一般的にそれを黒歴史ノートって呼ぶんだよ」
呆れた表情で少年は言う
「…セクハラ、訴えるよ?」
時速150km/hのデッドボールが投げられる
「はぁ?頭おかしいだろ」
素直に感想を伝えると
「世間一般、女の子の方、信じる」
意趣返しと言わんばかりに、自慢げな語り口
「……。勘弁してください」
両手を上げて降参の意を示す
無言で視線を送る少女
「わかったよ、お前の創作ノートなんて読んでねえよ」
これでいいだろ?と渋々話す少年
「うん、ならよかった」
満足したのか、再び麺をズズズと啜り始める煙
「余りあるか?」
ふと小腹が空いたのか、少年が問うと
煙は足元の鞄を開けくと
「一個150円、選んで」
鞄いっぱいのカップ麺を見せた
味もそれぞれ揃っていた
「……。」
「本当何しに学校きてんだよお前」
何度目の言葉だろうか
ポケットを弄り、財布から150円を取り出す
それを机に置くと、みそ味を選んで少年は包装を破いた
その後部室には二つの麺を啜る音が響いた
煙る、燻る、曇り空 @kz_sasara
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