図書室、中二病

物語とは得てして唐突に始まる、まるで我々の人生のように

そして、大抵納得のゆく結末は得られない、まるで我々の人生のように


「ルビ、その人の個性、出るよね」

突拍子もなく、彼女は話し出す


「えっ…最初のやつと関係なくない?」

今日も少年は彼女『倉井 煙』と一緒にいた


「図書室のカーテンってなんでいつも閉まってんの?」

少年はなんとなく質問をした


「黒龍(カーストドラゴン)の封じられし我が邪眼」

突如少女は右手で左目を抑えながら、俯きの姿勢で語り出した


「そんな典型的な中二病って本当にいるのか?」

漫画や小説でよく、龍だの邪眼だのと語られる中二病


「…わからない」

珍しく饒舌に話した彼女だが、気がつけばいつもの話し方だった


「ルビか…」

少年は少しの間考え込んだ後


「ふっ!、歪み切ったこの世界を我が夢想(イデア)を持って塗り替えよう!千の刻(とき)を過ぎようとも、我が崇高なる志に一片の瑕疵なし!」


天井を見上げるように首を上げ、額に手を当ててノリノリと語り出した


「うわぁ……」

煙の一声で静寂が生まれる


二人しかいない図書室はカーテン越しの薄暗い光に照らされていた


……


「なんか言えよ!」

依然として、煙は少年を無視したまま、ピンク色の手帳を眺める


「元はそっちがやり出したことだろ!?」

沈黙に耐えきれず、少年は叫ぶ


「しー、図書館で大声、だめ」

手帳を下ろし、人差し指を口に当てながら煙は注意する


「図書室と図書館って何が違うんだ?」

再び少年は質問をした


キンコーン〜カンコーン〜


「鍵、返してきて」

鍵を無言で投げつける少女


「はあ、わかったよ…」

諦めの気持ちと一緒に溜息を吐き出し、少年は職員室へと向かった


一人になった、図書室の中


少女は、ペン片手に手帳に書き込みながら呟く


「一般的に、図書館は図書室に比べ規模が大きい、視聴覚室や子供用遊具スペースがあったりもする」


「カーテン、本が日光で、傷まないために……。」

聞いてきた当人がいない中返答は静かに響く

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