煙る、燻る、曇り空
@kz_sasara
屋上、朗読
この誤った人生に終止符を打とう
始めはどうであれ、ここまできてしまった
せめて、せめてこれ以上の苦しみからは逃れよう
終わりを、今よりも残酷な未来を見ないために、死のう
「そう言って、少女は首に縄をかけ、その両足を…」
少女は手のひらより一回り大きい手帳を見ながら朗読をする
「怖えよ、どうした急に?」
同い年くらいの少年は戸惑い混じりに質問をした
「私の小学校の時の作品を読んでいるの」
そう言って、『くらい けむ』と書かれたピンク色の手帳を少年に見せた
『倉井 煙』
ショートボブに切り揃えた襟足と首周りまで伸びた後ろ髪
そして目が隠れてしまいそうな長さの前髪
黒いセーラー服に身を包んだ彼女はまるで幽霊かのように白い手でスカートを払うと、体を起こした
「汚いね、ここ。」
そうぼやきながら、彼女は埃で白くなったスカートをつまむ
「当たり前だろ、ここは立ち入り禁止の屋上だぞ」
掃除などされる訳ないだろと少年は思った
「憧れだったの」
少ない口数でポツリと煙は言った
「黒歴史ノートを人前で読み上げるのが?」
少年は意地悪い口調で言葉を吐き出した
「…ちがう、学校の屋上、『学園もの』のテンプレ」
「気持ちはわかる、だけどな…ここ!立ち入り禁止!」
身振り手振りを入れつつ、主張する少年
「いいの、私は」
淡白な言い口で煙は断定した
「はあ、戻るぞ」
少年はジト目で彼女を睨む
「うん」
小さく頷いて、煙は校舎への扉を潜っていった
ガタンと音を立てて扉は閉まった
「普通は一緒に戻るところだろ…」
呆れ気味で少年はため息混じりに吐き捨てた
そのまま先行く煙を追い、少年はドアノブを捻った
捻った…
「ん?おかしいな…」
もう一度捻った
「……。」
おーーーいいぃぃぃ!!!??
猛烈なドアバンバンをする
………。
結局、少年は排水管を伝って屋上を降りました
良い子は真似しないでね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます