第11話

「グオッ」


 俺はアースモンキーのアキレス腱を切れば楽に勝てるんじゃないかと思い、アキレス腱の場所を《引っ掻く》が存外硬い体毛に阻まれる。HPを見ると、6しか減ってない。


【攻撃力】41に加え【称号】の猿の虐殺者、更には3つのスキルが合わさってこれだ。見つけた時に即戦っていたら、HPが減ることもなかったかもしれない。


 あの猿たちは尊い犠牲だったのだ。


 猿大虐殺を正当化しようとするが、無理だ。生きていくには殺生は仕方ないと割り切るしかない。


「グォオオッ!」


 自らの巨体を生かして、振りかぶり上から拳を放ってくる。


 ギリギリで避けることができた。予備動作も大きく、《動体視力強化》もあるため、腕の軌道を正確に読み、避けることができた。


 アースモンキーが殴った所には小さなクレーターが出来ている。


 おいおい、俺の方が【攻撃力】高いんじゃないのかよ。


「こぉんっ!」


 殴った後の隙を逃さまいと再度アキレス腱を《引っ掻く》。すると、プツンという音がした。


 よっしゃああー!


 アキレス腱は切れる時、プツンと音がすると聞いたことがあるから、恐らく切れたのだろう。


 引っ掻いた場所からはだくだくと血が出て、アースモンキーは立てなくなったため、立膝になっている。


 そのまま、攻め続けようとしたが、先に攻撃を仕掛けて来たのは立てないはずのアースモンキーだった。


 片足で立ち、殴ろうとしてくる。だが、振りかぶり殴ろうとする時には俺はもうその場からバックステップで離れていた。


 そのため、アースモンキーは間合いを縮めるのを余儀なくされ、先程までの二足歩行ではなく、前足2本後ろ足1本の三足歩行で走ってくる。


 一瞬驚いたが、足が1本無い状態で走るのはバランスが悪いのだろうか。遅い。なんとか走ってるように見える。


 逃げ続ければ、確実な隙が生まれ、無傷で勝てるだろう。


 だが、それでは俺の実戦経験が積めない。だから俺もアースモンキーに向かって駆けて行く。


 実戦経験の少なさだろうか、それとも、《挑発》のスキル効果だろうか。勝てるという慢心が生まれてしまった。


「くぉんっ!?」


 俺を目掛けて、木の幹の先を尖らせたような槍が飛んでくる。土魔法で作ったのだろう。


 なんとか直撃は避けれたが、完全には避けることはできなかった。


 先端には当たることはなかったが、木の幹のような部分が当たって俺は吹き飛ばされてしまう。


 よろよろと立ち上がり、前を向くと、そこにはなんとか姿勢を保ち、俺に殴りかかろうとするアースモンキーがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る