第4話 夢

私は夢を見た。

海の中を泳いでいる。

前方には大きな影が二つ――それにくっつくように小さい影が一つ。

その3匹はとても仲が良さそうに見えた。

私はそれを一番後方から眺める。

最初はその3匹と私は近い距離で一緒に泳いでいた。

私はその3匹に付いていこうと必死にヒレを動かした。

でも、だんだんとヒレが重くなっていく。

今度はからだが重くなっていく。

だんだんと私は3匹から遠ざかり、次第に暗い暗い海の底へ吸い込まれていく。

――どこからか笑い声がした。

透明な壁の向こうにいるニンゲン2人が私を指差して笑っていた。

まるで面白いものを見つけたと嘲笑うかのような笑みだった。

そしてニンゲンは透明な壁の向こうでSEXをし始めた。

今度は私を見向きもせずにその行為に没頭している様子だった。

私はいつの間にかピクリともからだを動かせなくなっていた。


私はベッドから這うように起きた。

大量の汗をかいたのかシーツが湿っている。

それは"悪夢"だと"悲しい夢"だと私は評価した。

そしてその魚はまるで今の私みたいであると認識した。

そんなことは理解っていた。

これが物語でこんな主人公がいたら、私もその人物を愚かだと思う。

――でも、いいんだ。

カレは私を嫌いになってはいない。

どんなに愚かでも、生涯何も与えられなかったとしても――

カレとの思い出があれば私は生きていける。

"それじゃあ、また――"

カレは最後にそう言ってくれた。

その言葉を、信じ続けようと私は思った。


「ごめんね」

私はかつて天高く昇った花束にそう言った。

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片利共生~永遠の片想い~ こばおじ @k0ba0jisan

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