第27話 不審者は誰だ
「ったく、今回の訪問も俺かよ」
「本当は嬉しい癖にー」
「うっせぇ」
本物サマのフリしてパーティーに出るよりは気楽なだけだっての。
「それにしても影武者くんは優しいねぇ。自分が居たことの無い孤児院を助けてほしいって坊っちゃんに頼むなんてさ」
「あの院長にはガキどもの面倒を見てもらってる恩があるんだよ」
「ふーむ、そういうところが子どもたちに慕われてるのかな?」
こいつ、今日はやたらと絡んでくるな。
「──で、この間はあの子たちからどんな相談を受けたんだい?」
相変わらず目敏い奴だ。
「……ここ最近妙な奴を見かけて不安だって話を聞いただけだ」
「妙な奴、ねぇ」
「小綺麗な格好をした、この辺りじゃ見ない顔らしい」
「うーん、それだけじゃ何とも言えないねぇ」
だから言わなくても良いと思ってたんだよ。
「領主さ──あれ、違う……?」
久しぶりに見たな、この手の反応。
それはそれとして誰だこいつ。
「坊っちゃんに何のご用かなー?」
「つい先程不審者を捕らえたのですが、どうやら異国の者らしいので領主様の判断を仰ぎたく……」
「屋敷へ向かわず、ボクたちに声をかけた理由は?」
「領主様の馬車がこちらを通るという話を聞きまして……」
「……捕らえた不審者を屋敷の前に連れて行くよう、現場の人たちに伝えてもらえるかな」
「はい!」
元気よく返事をしたそいつは慌しく走り去って行く。
話の内容はさておき、いかにも馬鹿正直そうな奴だったな。
「異国から来た不審者、か。もし本当だとしたら面倒なことになりそうだね」
「そうなのか?」
「下手をすれば国際問題……今までとは比にならない厄介事が押し寄せてくると思って良いよ」
マジかよ、勘弁してくれ。
「孤児院の子どもたちが見たっていう小綺麗な格好の人とさっきの彼が捕まえたっていう異国の人が同一人物で、これといった問題を起こしてなければすぐに片付くんだけどねぇ」
あってたまるかよ、そんな虫が良すぎる展開。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます