第23話 チェックメイト

「お急ぎください閣下!」

「分かっておる!」


 誰がボロを出した。

 いつ綻びが生じた。

 どこで立ち回りを間違えた。


「いたぞ!」

「取り囲め!」


 馬鹿な、何故だ。

 どうしてもう、先回りをされて──


「夜逃げを成功させるコツは目立たない工夫をすること。服装、タイミング、直前の行動」

「何奴──ぐぁっ!」

「尻尾を掴まれた直後に着の身着のまま逃げ出すのは是非捕まえてくださいって言ってるようなもんだぜ、おっさん」


 護衛の背中を踏みつけたまま、薄汚い格好をした男は下卑た笑みを浮かべる。


「っ……貴様如きに捕まるぐらいなら!」

「誰が許すかよ、そんなこと」


──何が、起きた。

 懐に忍ばせていたナイフで首を掻っ切る筈だったのに。

 どうしてこんな、地に頭を擦り付けるような姿勢になっている。


「……後のことは任せて良いのか?」

「ああ、ここから先は我々の管轄だ」


 やめろ、ふざけるな。

 こんなことあってはならない。

 こんな形で終わって良い筈が無い。

 こんな、こんな──


──宰相の悪事は白日の下に晒され、然るべき罰が下された。

 三十年の禁固刑。

 宰相の年齢を考慮すると事実上の終身刑だった。

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