第22話 暴かれた謀略
「フォルスートを治める次代の王はターサ殿に決まった。戴冠式を滞り無く行われれば此度の一件は落着する。そのような状況で我に何の用だ?ハイホース卿よ」
「僅かに残る懸念を払拭しに参りました」
「我を……いや、父上を担ぎ上げて甘い汁を吸おうとしていた者たちか?」
やはり真っ先に浮かぶ候補はそれか。
「奴らは風見鶏だ。漁夫の利を得る機を逸した以上、表向きだけでも従順に振る舞うだろう」
「故に捨て置いても問題無い、という見解に異論はありません」
「であれば他に誰がいると言うのだ?」
すっかり整った盤面を崩せる者はもういない。
私とてディスカード卿の報告を受けるまではそう思っていた。
「……ルクトー王子殿下、これより話すことは憶測の域を出ないもの。それを理解した上でお聞きください」
「良かろう、申せ」
「国王陛下とその実子であるお三方が失脚した場合、王位を継承することになるのは誰でしょうか」
「……序列だけ見ればターサ殿のご子息であるコル殿だな」
「しかしコル様は言葉を発するようになったばかりの幼子。政務を執ることなど到底出来ません」
そうなると誰が政を執り行うことになるか。
「……なるほど、宰相のジェスター殿か」
「繰り返しになりますがこれはあくまで憶測の話。確固たる証拠が無ければ下らぬ戯言に過ぎません」
「その戯言を確信に変える証拠を掴んでいるからこそ我の前で話しているのであろう?」
勿体振るのはここまでにした方が良さそうだ。
「カーロ様の身柄を拘束し、虚報を流布していた犯人はジェスター宰相閣下の息が掛かった者たちです」
「彼を、カーロ殿を助け出すことは出来たのか!?」
「はい、ヒロイック卿の配下を始めとする精鋭たちが見事成し遂げました」
「そうか……良かった……」
ルクトー王子殿下とカーロ様は友人の間柄。
無事を知って喜ぶのは当然の反応だ。
「ジェスター宰相閣下は王位を継承出来るのはコル様だけである状況を作り、国王自身が政を為せぬ時は宰相が代行を務めるという決まりを利用して国政の実権を握る計画を進めていた」
「その一環としてカーロ殿は捕らえられていた、というわけか」
「ミュンツェ王女殿下の失墜を足がかりに邪魔者を纏めて排除する腹積もりだったのでしょう」
「何と卑劣な……!」
「その目論見が打ち砕かれた今、ジェスター宰相閣下は相当追い詰められていることでしょう」
「……とどめを刺す算段はついているのか?」
「ご心配には及びません、と言いたいところですが所詮私共はしがない貴族。遅れを取る可能性は低くないでしょう」
「つまり後詰めが欲しいと言うことか」
「不躾であることは重々承知しております」
「……良かろう、その策略に乗ってやる」
「ありがとうございます」
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