第21話 贖いの形

「ロッド王子殿下、あれの後を追うなどという愚かな行為はもうおやめください。もはや笑い話の種にもなりません」

「──そうか、民衆は飽いたか」

「は、」

「であればこれ以上虚報を流布する必要は無いな」


 まさか。


「道化を、演じておられていたのですか?」

「最初は本気で後を追うつもりだったぞ?そなたの妹に心を奪われていたのは覆しようの無い事実だからな」

「……では、心変わりをしたきっかけは?」

「姉上が乱心した、という報せだ。義兄殿が落命したのは余の落ち度でもあることを思い出すには十分過ぎるものだった」


 ターサ王女殿下の夫、ロッド王子殿下にとっては義理の兄に当たるカリクス殿が殺されたのはロッド王子殿下が愚妹をターサ王女殿下やカリクス殿に紹介したその日。

──私があれの短慮さを見くびっていたが故に惨劇を防げなかった日。


「次は余が問う番だ、ファタール卿。何故メロゥの殺害を断行した?」

「殿下たちの手を煩わせたくなかったのが一つ、誹りを受けるべきは私だと思ったのが一つ」

「憎まれ役を買って出た、ということか」

「予てよりあれのことで私を恨むものは多かったですからね」

「そうか、では余も倣うとしよう」


 覚悟の上だ。


「国を揺るがした罪は重いぞ」

「存じております」

「そなたを極刑に処す程度では足りん」

「存じております」

「故にその命が尽きるまでこの国に奉仕することをそなたへの懲罰とする」

「左様ですか」

「そなたの勤め先は姉上の下だ」

「…………はい?」

「実は先日姉上が王位を継承する意思を表明してな。父上とも話し合った結果、正式に発表する運びとなったのだ」


 そこまでは良い。

 ディスカード卿とディアナ嬢は本当によくやってくれた。


「その話し合いをした際にそなたを召し抱えることも決まったのだ」


 そこが分からない。


「一息に仕留めるよりも長期に渡って酷使する方が溜飲を下げることが出来る。つまりはそういう話だ」

「……陰湿な意趣返し、ということですか」

「言っておくがそなたに拒否権など無いぞ」

「望むところです」


 ファタール家を私の代で終わらせる。

 それさえ果たせれば過程がどうなろうと──

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