第17話 噂話に花が咲く

「ごきげんようディスカード卿。ロッド王子殿下がまたしても後追い自殺を図るも失敗なさったそうですな」


「ディスカード卿もご存じの通りターサ王女殿下とカリクス様はとてもとても仲睦まじい夫婦でした。それが……あぁ、なんとお労しい……」


「ミュンツェ王女殿下の野心は婚約者であるカーロ様が失踪した程度では砕けそうにありませんね。いやはや、どうしたものやら……」


「ルクトー王子殿下を支持する一派が不穏な動きを見せている、という噂を聞きました。ディスカード卿も気をつけてくださいね」


「即位の時だけでなく退位の時にまで災難に見舞われるとは……国王陛下はどこまでも不運なお方だ」


「……どいつもこいつも王族絡みの話ばっかりしてくるな」

「それが今のトレンドってのもあるけど、実際のところは情報戦だよ」

「情報戦、ねぇ」

「身内には裏が取れてる情報を流して敵対勢力にはガセネタを掴ませる。そうとは気づかれないようさりげなく、ね」


 いつも以上に噂話が盛んな理由はそれか。


「念のためもう一度言っておくけど、ディスカード家の所属はターサ王女殿下支持派だからね」


 忘れたり間違えたりしたらタダじゃ済まないってことか。

 今に始まったことじゃねぇけど物騒だな。


「シフく……じゃなかった、ディスカード卿!」

「おー……んん?」

「……何だよ、その顔は」

「珍しい組み合わせだなーって」

「そうかい?」


 弟クンとマウント野郎がつるんでるとこなんて初めて見たぞ、俺。


「……まぁ良いや。そっちは目ぼしい情報を仕入れられたのか?」

「目ぼしい情報……」

「ルクトー王子殿下支持派が怪しい動きを見せてるってのが一番の収穫ですかねぇ」

「つまり兄様の懸念は正しかったってことか」


 そういや何か含みのあることを言ってたな、こいつの兄貴。


「あそこは王兄殿下支持派でもあるから……放っておいたらまずいことになるかも……」

「かも、じゃなくて確定事項なんだよ。すぐに対処を……いや、下手に刺激しない方が良いか……?」

「若君、まずは彼らの企みを探るところから始めるべきかと」

「気が合うねぇ、ボクも同じことを言おうと思ってたんだ」

「……そうだな、今はまだ慎重に動いた方が良い時期だ」


 何か話が纏まったみたいだしちょっと聞いてみるか。


「その、オウケイ……って誰だ?」

「おまっ……おいそこのヘラヘラしてる使用人!」

「いやーすいません、一気に詰め込むと覚えきれなくなるのは目に見えてたからさわりの部分しか教えてないんですよー」


 正直言うと理不尽女に振り回された王族たちの名前すら怪しいんだよな。


「レオンくん、話の続きは別の場所でやろう。騒いだせいで注目を集めてる」

「っ……悪い、今のは僕の落ち度だ」


 いや根本的には物覚えが悪い俺のせいだろ。

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