第4話 帰還、そして報告

「お帰り、初めての晩餐会はどうだった?」

「クッッッソ疲れた」

「嫌味な若様にはテンプレまんまのマウントを取られ、許嫁のお嬢さんには即効で偽物だと見抜かれ、若当主の妹様には意味ありげな視線を向けられてたからねぇ」

「それは疲れもする」


 最後のは気のせいだ気のせい。

 そういうことにさせてくれ。


「もう寝て良いか……」

「良いよー、坊っちゃんへの報告はボクがやっとくから」

「寝間着には着替えろよ、礼服を出すのは朝でも構わん」

「へいへい……」


「──リューイ、彼が影武者だと気づいていた人は他にどれくらいいた?」

「パーティー会場にいたうちの2割前後、ってとこですかね。若当主はじめ頭の切れそうな連中は分かってて素知らぬ顔をしてる感じでした」

「なら暫くは影武者くんを行かせて大丈夫そうだね」


 初回で仕掛けてくるのは飛び抜けた直感の持ち主か愚者の二択。

 今回のパーティー会場にはそのどちらもいなかった。

 それが分かっただけでも十分だ。


「何か仕掛けるとしたら3、4回パーティーを開いた後。ボクがそっち側ならその辺りを頃合いと見ます」

「僕も同じ見解だ」

「……万が一に備えて影武者を鍛えておきますか?」

「護身術くらいは学ばせた方が良いかもね。多少は身につけているだろうけど、所詮はこそ泥の付け焼き刃だ」


 彼の想定を超える事態が起こり得る可能性はいくらでもある。

 用心に越したことは無い。


「そっちは頼むよワークス、腕っぷし方面はボクの管轄外だし」

「お前はいつも通りこそこそ嗅ぎ回っていろ、力で解決できることはオレがどうにかする」

「わー頼もしー」


 毎度のことながらこの二人はよく働く。

 だから色々任せやすい。


「……さて、そろそろ僕たちも休もうか。あまり夜更かしがすぎると婆やに叱られてしまう」

「うげ、それは勘弁願いたいですね」

「あの婆様を怒らせるとただじゃ済まないですからねぇ……」

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