第1章【僕と先輩とドタバタ】その⑤
土日が過ぎて月曜日になった。何事もなく学校に着いた僕は自分の席に座る。
リュックから本を取り出して読んでいると聡太郎がやって来た。
「おはよう〜、今日から午後も学校だな。体操着とかちゃんと持ってきたか?」
一旦本を閉じてから返事をする。
「おはよう。忘れてない、ちゃんと中に着てるよ。」
「そりゃよかった。」
そう言って聡太郎は1度自分の席に。言われた通り今週からは平常授業が始まりなんなら午後もある。
制服もまだ馴染んでないのに初日の今日は体育があって体操着も初めて着ることにもなった。
ようやく学校らしい生活が始まるんだからこれから慣れていくんだろう。
教室の引き戸が開く音がする、入ってきたのは姫野さんだった。
この前は詰められてしまったけど今回に至っては何も無い、はず。金曜日に偶然先輩と帰ることになったことは知られてないだろうから。
ただそうもいかないらしく目撃者はほかにいた。
「なあ、話すか悩んだんだが金曜日に一緒に帰ってたよな。」
一瞬だけ誤魔化す選択肢が浮かんでそれをやめる、誤魔化しようもないし大人しく答えるしかない。
「まあ、そうだよ。」
見られてたのには完全に気付かなかった。自転車通学だから住宅街に居た時を見られたんだろうな、少し気まずい。
「で、どういうことだよ?」
きっとこれはどうして一緒に帰ったって意味なんだろう。会話を始めた所は見られてないことを祈りつつ答える。
「偶然同じタイミングで下校したってだけだから、別にそういうのじゃない。それに」
「へぇ、面白そうな話してるじゃん。」
「「あっ…。」」
声の方を向くと、居たのはもちろん姫野さん。教室でこういう話をするのは、ちょっと油断だったかもしれない。
彼女は僕に敵意を持っているから、この会話を聞かれたのは正直まずい。
「ふーん、お姉と一緒に帰ったんだ。」
「い、いや途中まで同じ帰り道だったってだけで…」
「じゃあ、どこまで一緒だったの?」
「え、駅までです。」
「へえ、20分ぐらいは一緒だったと。」
誘導尋問だ…。このままペースに乗せられてたらどんどん不利な方向に行くんじゃなかろうか。
彼女も誤解してる訳だしこれ以上悪印象になる前に解かないと。
「一緒に帰ることになったのは悪いんだけど、あの告白間違いだから…。先輩と帰ったのはそれを話してたからってだけ。」
「嘘かもしれないから信じない。私から逃げる気でしょあんた。」
まさかそう返されるなんて思いもしなかった。そこまで信用ないのか、僕。
「先輩に聞けばわかるから聞いて欲しい。」
「じゃあ放課後お姉に会いに行くから一緒に来て。」
「分かった。」
これで何とかなるだろうか。と、そんなことを考えたところでチャイムがなった。気がつけば教卓に坂本先生が立っていて早く席に着けなんて声を出している。
クラス委員の声に合わせて僕らは号令をして、今日の学校が始まった。
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