① ガサ入れ開始


 捜査本部に着いた。平滝係長は、直ぐに奥田管理官に近付くと、管理官から言葉をかけられた。

「平滝君! 例の令状が取れたよ早速明日ガサ入れを決行だ」

「管理官❗ 有り難うございます。それでは、オーイ下駄さん、明日二ヶ所ガサ入れをおこなうから、捜査班を分けてよ、一組は会社員のマンション。一組は○✕産業の社員の机とその周囲、個人ロッカー等だ。此方は六人ほどでいいな」

「はい、解りました」と、ゲタさんは、手早く班分けをおこなった。

「よし、明日は朝からガサ入れだ! 物証を逃すんじゃないぞ!」

「おう❗」と、一同が声を出した。



 平滝係長は、会社に向かった。会社に入ると、真っ直ぐに会社の経理部に向かうと、長谷川係長の職場に向かった。

「長谷川係長。令状が出たのであなたの机の回りや、ロッカーの中を捜索させて貰います」と、長谷川係長に令状を見せて、捜索を始めた。近くにいた経理課の職員に立ち会いを求めた。

「長谷川係長。貴方には少し事情を聴きたいので、小会議室で構いませんので、空いていませんか?」長谷川係長は、仕方なく平滝係長と近くの小部屋へと入っていった。残りの捜査員六名は机の中、ロッカーの中を立会人を求めて、捜索を始めた。

小部屋に入った二人は長机を挟むように向かい合って座った。

「さて、長谷川係長、いや長谷川哲夫さん、あなたの戸籍を調査させて貰いました。そして、結果的に貴方が三十四年前に起こった、朝日新聞の神戸市局でテロに会い、銃殺されたOさんの息子さんであることが、判明いたしました。勿論、現在あなたのマンションも管理人を立ち会いを求めて、家宅捜査に入っております。もうお分かりですね。佐伯部長を殺害したのは、長谷川哲夫さん❗ 貴方ですね」と問いかけると、

「私ですか? 何故私が部長を殺害しなくてはならないのですか? 理由がありません」

「それは、佐伯部長があなたの父上を銃殺した、張本人だからです」

「でも、私には私の父を銃殺した本人なんて解りませんよ」

「成る程、そうなんですか? その辺は、貴方でなくては確かに説明できませんね」その時。ゲタさんが会議室に飛び込んできて、

「係長! こんなものが机の奥から出てきました」と言って、黒皮のA4サイズの手帳を持ってきた。それに眼を通していた係長は、

「成る程、この手帳をどこかで、見たのですね。そして、長年の仇敵が見つかったと言うわけですか」係長は相手を見詰めた。その経緯を長谷川係長は、訥々と答え始めた。

「しかし、自分の机に隠すなんて失敗しましたね」

「まさか、こんなに早く手入れが入るとは、思いもしなかったですからね」力なく彼は溜め息を着いた。あの手帳が見つかったなら、言い訳は出来ないだろうと感じた。

「解りました。確かに佐伯部長を殺害したのは私です」そうしているうちにも、マンション組から、色々な物証が見つかったことや、パソコンに、銃の組み立てかたなどを検索していた跡が、見つかったと報告があった。

「君のマンションからも、沢山物証が見つかったみたいだよ」長谷川係長は、肩を落とし、項垂れていた。

「父もそうだけど、母の、母さんの仇を撃ちたかった。母は私を大学まで進学させるために、一人で朝から夜まで一生懸命働いてくれた。しかし無理をしすぎて、二年前に病気で亡くなったんだ❗ 悔しかった」体を震わせながら小さな声で答えた。


そうやって事情聴取をやっているうちに、

「ガサ入れを終わりました」と、ゲタさんから報告が入った。

「よし、それでは捜査本部に戻るか。長谷川係長。貴方も一緒に来て貰いますよ」そうして、係長たちは捜査本部へと帰っていった。長谷川哲夫を連れて。

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