⑧ 兵庫県にて

 

 兵庫県警を出た二人は、近くのレストランに入って、何か食事を摂ることにした。そう言えばもう一時を廻っている。

「山田さん、お腹空いたね。此処で何か食事でもしようよ」と、係長に言われて入ってきた。

「俺はハンバーグ定食にしよう、山田さんは、何にする」

「私はしようが焼き定食にします」

すると、係長はウエイトレスを呼ぶと、注文をした。

「山田さん、何だか見えてきましたね。私の筋読み通りだ」

「はあ、そうなんですか? 私にはよく解りませんが」

「山田さんは、○✕産業に行かなかったんだから、しょうがないよ」

と、話していると、注文した食事が届いたので、しばらく話を中断し、ウエイトレスが去っていくと、話を続けた。

「山田さん。事件簿にあった、朝日新聞の記者Oさんの戸籍謄本を、現在まで追跡してほしいんだ。確か神戸市中央区三宮町に最初の戸籍があったよね。Oさんがなくなった後の戸籍は、筆頭者がその奥さんになっていると思うんだ。付票の謄本も含めて、辿ってくれないか」

「はい、解りました。で、係長は此処での食事の後、どこで待っていますか?」

「うん、私は三ノ宮駅まで一緒に行くから、駅の構内の待合所にでも待っているよ」

「はい、解りました。では私も食事がすんだら三ノ宮駅まで一緒に参りましょう。そして私はそのまま神戸市役所に行って参ります」

「山田さん、よろしく頼みましたよ」そして、平滝係長は、駅の周辺や、駅の構内を散策して待合所で、山田さんの帰りを待っていた。ところが待ち望むところ、一時間ほどで山田さんは帰ってきた。

「山田さん、やけに早かったね」

「早いはずですよ係長。Oさんのその後の戸籍は、神戸市から奥さんの実家である、東京都北区に転籍していました。後は北区役所に行かなくては解りません」

「じゃあ、Oさんが、亡くなって直ぐに転籍したんだね」

「そうなりますね」

「一寸、その神戸市で取った除籍の謄本と付票を見せておくれ」そして、その除籍をみた係長は、

「成る程、北区に実家があったんだね、実家は長谷川幸三さんと言うのか、お父さんの戸籍に復籍したわけだな。よしそれなら東京にいるよしお(田岡義雄巡査長)に、電話して戸籍を取らせに行かせよう」と言って、直ぐに携帯電話で、よしおに、連絡をした。

「よしおですか? あいつ大丈夫かな~」と山田巡査部長は心配な声を出した。

「大丈夫だよ、よ~く言い聞かせたから」と係長は微笑んだ。

「よし、僕らは直ぐに東京の捜査本部に帰ろう」そして、二人は急いで新幹線の切符を買いに行った。新幹線に乗って、名古屋辺りでよしおから係長に連絡が入った。

「あっ、係長ですか私です」

「よしおか! ちょっと待て、今新幹線のなかだから、デッキまで移動するからな」

「はい、了解です」係長がデッキに移動すると、会話を再開した。

「よしお! 無事戸籍の謄本は取れたか?」

「はい、勿論です。係長に指示された戸籍を北区役所で、手に入れましたが。更に奥さんの友枝さんは、復籍してから二ヶ月後に男の子を生んで、奥さんが筆頭者の別戸籍を作ってました。戸籍の住所はそのままで、長男が入ってました。名前は哲夫と言います」

「なんだって❗ 哲夫だって! そうかい、よしお、ご苦労様。ところで、よしお! お前付票もちゃんと取っただろうな?」

「はい、勿論です」係長はわずかに頷いた。席に戻ると山田さんに、

「山田さん、俺の筋読みに嵌まってきたよ」と窓から外を眺めた。

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