③ 思いがけない報告


 ゲタやんと西やんを除く他の捜査員たちは、再び手懸かりを求めて、街へと出ていった。

「確か○✕産業の経理課の若手が数人来ているはずだ。それに被害者の子供たちも帰ってきているんだろう。彼らにも事情を良く聴いてみてくれ」こうして捜査本部の捜査員は、みんな出ていった。空になった捜査本部の部屋で、管理官は、佐伯部長の名刺入れを見ていた。

「うーん、沢山の名刺があるな。大手の会社の部長さんだから、当たり前か。不動産会社の社長の名刺や、建設会社の社長の名刺。それに、政治家の名刺も結構あるな!」と、呟きながら見ていたが、

「ン、ちょっと待てよ。これらの政治家は自衛隊関係の政治家が多いな。自衛隊出身の政治家。自衛隊と取引のあった関係会社出身の政治家。それも中部本部関連の政治家が多いな」それを耳にした係長は、

「えっ、何ですって? 管理官、今自衛隊と仰いましたか?」

「あぁ、言ったよ。かなり多いんだ。元の漠寮長なんかね」

「そーなんですか。一寸引っ掛かりますね」

「何か?」

「はい、例の神戸局の指定事件の容疑者のなかに、生き証人の新聞記者の証言では、犯人は素人とは思えなかった。ともあったと思うんですが……。私の勘違いですかね」

「ウーム、それはそれとして、君は私が持って帰った部長室にあった、IR法の本を見てるようだが、何かあったかね?」

「えぇ、一応目を通していたんですけど、佐伯部長は、どうやら関心が強かったようですね。所々に重要な部分にはピンク色の蛍光ペンでマークをしていますし、何度も読み返した後が感じられますね。かといって、今回の事件と繋がるような所はありませんでしたけど」

「そうか」

「ヤッパリ、だと想われますね」

「後は、科捜研や警科研からの結果報告待ちか」

「そうですね、後Nシステムにも協力を頼んでいますので、その見かけたと言うミニクーパの動向が解るかどうかですね。何しろ物的証拠が何も無いんですからね」そうしているうちに、昼間となった。署長が気を利かせて、

「お二人とも、お昼は私たちと同じで良いでしょうか?」

「はい、勿論構いませんよ」と言うことで、会議室に残った者は、東玉川署が用意をしてくれた昼食を食べた。すると、丁度食べ終わった頃、平滝警部の携帯電話が鳴り響いた。表示を見ると、ゲタさんだった。

「あ、係長ですか。篠立です」

「ゲタさんかい、何か解ったのか?」

「はい、中間報告をしますと、どうやら佐伯部長は、この会社には中間採用で入社しているようなんですよ。履歴書を見て判明しました」

「じゃあ、会社にはいる前はどうだったんだ?」

「どうやら、彼は若い頃自衛隊に入隊していた模様なんですよ」

「な、何だって! 自衛隊に。そして自衛隊を辞めた理由は?」

「それがどうにも一身上の都合としか書いておりませんで」

「どこの自衛隊か解るか?」

「はい、それは書いてありました。なんでも、兵庫県にある伊丹駐屯地みたいです」

「兵庫県の陸上自衛隊、伊丹駐屯地かい?」

「はい、そのようになっています。何か有りますか? 一旦昼のご報告をしておきます。夜の方はまた、夜にご報告を致します」

「了解!」係長は、少し興奮気味に電話を切った。

「管理官❗ 繋がり始めましたね」

「そうみたいだな」と眼を輝かせ始めた。

「管理官❗ 私の筋読みに入ってきたようです。御願いです。私を兵庫県警まで、行かせてください」

「良いだろう、向こうには栗林から了解をとらせるから。どうせ例の事件簿の本物を見たいのだろ」

「はい、ありがとうございます。山田和夫が捜査から帰ってきたら、明日にでも、俺と一緒に兵庫県警まで行かせて貰います!」

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