③ 合同庁舎にて Ⅲ


   警察庁との掛け合い


「な、何だって! 一体どういう事だ。どうして○✕産業にも脅迫状が届くんだ! あの会社に聞き込みに行ったが、専務もわが社はIRとは関係がないと言っていたぞ! 本当は関係していたって事なのか?」そこで、平滝係長が言った。

「イヤ、確かに我々が『赤報隊』の話をした時、蓬来専務や長谷川経理係長の態度がおかしかったな」

「どうして、赤報隊は関係していると思って脅迫をしたのだろう」

「管理官! それはこれから関係してくると言うことではないですか。つまり会社内部にそれを知りうる人間がいる。と言うことではないですか」平滝係長は、続けて、

「大体、そんな組織に関することは警備局の公安課が事情を把握しているのではないでしょうか?」

「まだ、本当に赤報隊は、現存するのか? もうあの朝日新聞社神戸支店の襲撃から三十四年程経つのじゃないか。そうだ! 栗林警視、当時の事件の事件簿を拝見できないかな?」栗林警視は、

「公安課は、決して把握している事情を公開しない。しかし、事件簿の件は何とかしてみよう」

「そんな、それでは、誰にも解らないのかな。後は事件簿だよりか」

「何であの会社までが脅迫を受けるのだろう?」

「どうやら、IR法の関係らしいな。IR法は、日本人をダメにする法律だと考えての行動みたいだな」

「ギャンブル依存症のことか?」

「だろうな。それを危惧した赤報隊が脅迫状を送ったのじゃないかと、考えられている。

 

 そんな掛け合いを聞いていた、特捜部の主任は、

「それで、部長が殺害された。と言うわけなのか?」

「管理官! 捜査はこれからどうなるのでしょうか?」平滝係長も、問い質した。

「そうだな~、こんなことでは実行犯を名乗っている『赤報隊』については到底自分達だけでは、実態が掴めないな。君の言った通りのただのフェイクだったら、一体誰が………と、言うことかな?」

「誰かが『赤報隊』を名乗って、佐伯部長を殺害したと、言うことなのか?」小坂部主任が言葉を挟んだ。

「そうなると、かなり手の込んだ犯行となりますね。正に口封じではありませんか? 主任さん」

「そうですね! 我々も考え直す必要がありそうですね」

「つまり、主任さん。やはりIR法に関連した、代議士との収賄事件と言うことでしょうかね」

「………。………。イヤ、今は何も申し上げられません」と、汗をかきながら弁明した。

「それはないでしょう。お互いに手の内を知らないのに、お宅だけに情報を渡すわけには、いきませんよ!」そして、警部が言った。

「もし、IR法に関係しているのなら、脅迫状は、内閣府の関係閣僚だな。特に内閣で決定して。国土交通相が許可を発行するのだから、収賄容疑は国土交通相関係なのかな?」主任は顔を赤くして、

「そ、それは言えない!」

「まぁ、そうだろうね。俺たちに言うわけには行かないよな」栗林警視は、

「それは、特捜部の都合だろ。警察庁は関係しない」

「つまり、我々特捜部には力を貸せないと言うことか」

「今のところはな。これは上司に相談しないと俺の一存ではハッキリとは言えない」と、栗林警視は答えた。

「勿論、我々警視庁も同様だ」その言葉を聞いた、小坂部主任の顔が段々と赤くなって、癇癪を起こしそうだ。そこで、奥田管理官も、

「我々も、上司に相談しないといかんとも、申し上げられないな」平滝係長も、その意見に頷いた。

「成る程ね! 結局交渉決裂と、言うわけですな」と、小坂部主任が大きな声で鼻息荒く、総括した。

「それでは、我々はこれで失礼します」管理官と、栗林警視は同様な言葉で答えた。そして、合同庁舎を三人は後にした。

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