⑫ ○✕産業にて Ⅵ

   各部所の係長と ニ


 平滝係長の質問は続いた。

「それと、部長は携帯電話を持ちませんでしたか?」それに、管財係長が答えた。

「課長以上は、会社から配布される携帯電話をみんな持ってますが」

「あぁ、部長の引き出しにあったこの携帯でしょうか?」

「ハイ、その携帯です」

「個人的な携帯は持っていなかったですか?」

「はぁ、私の知る限りでは、持っていなかったみたいですが」

「そうですか、他のお二人も気がつきませんでしたか?」すると経理係長が言った。

「私は、別に個人用の携帯を持っていたように感じましたが」

「ほう、そうですか? 見たのですか?」

「いえ、別に見たわけではありませんが、何となく感じたんです。たまに私や人事課長と話すとき、何気なく"ちょっと"と言って席を外すことがありましたから」

「あ、成る程………。それで持っているように感じたわけですね」平滝係長は右手の指で髪の毛を弄びながら引っ張って、

「話は、ガラッと変わるのですが、佐伯部長の女性関係については、何か知りませんか?」

「女性関係ですか………。先ほども言いましたがプライベートなことは、解りません」

「いえ、部長も独り身だったので、女性の噂も一つやふたつは有ったのではないかと」

「そうですね、夜はお偉いさんとか、接待で銀座のCLUBによく行っていたらしいですけど、私たちはそんな高級な所にはお供できませんので、お水のことに関しては、全く解りませんね」

「そうですね。成る程」そこで、今度は管理官から質問が出た。

「貴方たちは、仕事柄『カジノ法案』の事は知っていますよね。貴方たちはどう思いますか? また、この会社は関係していないのですか?」その問いかけに、経理係長が答えた。

「もちろん、『IR法案』については知っていますが、今この会社は関係していないと思いますが。会議でも出てきませんし」

「成る程。"今は"ですね」最後に平滝係長から質問があった。

「あの、社用車の事なんですが。何台ほど有って、運転手は何人いるのでしょう。これは管財係長に聞いたら良いのかな」管財係長が答えた。

「部長以上に有りまして、部長職は三台の車を二人の運転手で、専務職は二台の車を二人で、やが一台、社長が一台、それぞれに一人づつ着いております」

「つまり、七台の車があり、運転手は六人いると言うことそですね。そこでですねその六人の昨日の分の運転日誌のコピーを一枚づつ貰えないでしょうか?」

「はぁ、昨日の運転日誌のコピーを一枚づつですか。解りました。今から運転手室まで行ってきます」と言って管財係長が部屋を出ていった。

「申し訳ありません! 迷惑掛けます」と、軽く頭を下げた。

「あとは、何かありますか? 管理官!」

「いや、もう私からはありません」

「そうですか。それでは皆さんお忙しいからだでしょうから。これで失礼しましょうか?」

「あぁ、そうだね」三人の係長は"ほっと"した感情を隠せなかった。

「あぁ、そうだ! 経理係長。部長さんのパソコンのパスワードの事だけど、電算部があると思いますが、そこでは解らないのかな」と、平滝係長が質問をした。

「勿論、電算部はありますが、知っているかどうか? 電話で聞いてみましょう」と言って、部長の席から電話をかけた。その後もとの席に戻って、

「今、電算係長に聞いてみたのですが、やはり知らないとの事でした」

「へー、ここの会社は配給のパソコンでも、自分でパスワードを変えてもいい訳なんだ。あのパソコンは会社の配給品でしょ?」

「ハイ、そうですが」そうやって時を過ごしていると、管財係長がコピーを持って帰ってきた。

「これで宜しいでしょうか?」管財係長が差し出した。それを受け取って平滝係長が確認すると、

「ハイ、これで結構です」と、管理官の法を向いた。

「それでは、長い間失礼しました今日のところはこれで失礼いたします。もし必要があればまた、来ますのでその時は、またご協力お願い致します」そして二人は部長室を出て、○✕産業を後にした。

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