⑧ ○✕産業にて Ⅱ
金沢経理課長と
何だかとぼけた感じの課長であると、係長たちは印象を受けた。
「さらにトラブル問題ですか、私には何も感じませんでしたがね。個人的な問題を抱えていたかは解りませんが」
「会社の仕事上で問題はありませんでしたか?」
「イイエ、全く問題有りませんでしたがね」
「そうですか」ここで聴き手が係長に変わった。
「それでは、私の方から、佐伯部長は上司からの信頼は大きかったのでしょうか?」
「えぇ、勿論! 上司からの信頼も大きかったですよ」
「対外的にもですか?」
「対外的? はて、どういう意味でしょうかね」
「勿論。仕事上で会社内部の事ではなく、対外的に他社などとの信頼関係の事ですが」
「えぇ、そうですね。勿論うちの会社の性質上他社との信頼関係は重要ですからね、部長はその点でも信頼の厚いお方でしたよ」
「本当ですか? これほどの会社の経理部長さんだった人ですよ、誰にも憎まれていなかったとはとても思えませんがね」
「そりゃあ、多少なりとは、恨みは買っていたかもしれませんが、それは本人しか解らないことで、私が申し上げることではありませんね」そこまで話をすると、煙草を取り出して、一服吸い始めた。なんとも胡散臭い男である。
「それでは、○✕産業の業務について少し説明して頂けますか?」
「業務内容ですか? 当社はリゾート開発の企画開発を行い、リゾート開発地の管理運営を請け負うものです」
「成る程、それでは最近出来たばかりの統合型リゾート(IR)整備推進法案に関係して、リゾート開発の企画を行政などに提案もしているのですか?」
「あぁ、所謂カジノ法案の事ですか。いえ、別に当社では関係していません。現在までは。それより、そんなことが当社の佐伯部長の死に何か関係があるのですか?」課長は何故か憮然とした表情で、声を荒げて答えた。
「勿論。何が動機となるかは解りませんですからね。意外なところに動機は転がっているものです。これは私の経験値から来るものですが」
と、その時応接室をノックする音がして、先程の秘書と背の高い浅黒い顔色をした、恰幅のよい紳士が一緒に入室してきた。秘書が、
「当社の専務である
「何でも、警視庁の刑事さんと伺ってやって参りました」と言って、お互いに自己紹介を行うと、課長のとなりに腰掛けた。
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