⑦ ○✕産業にて
金沢経理課長と
品川区に入り、カーナビを参考に会社を探し、やっと会社に到着した。大きなビルの玄関に立つ警備員に、警察手帳を提示して、ビル前の駐車場に停めた。そして二人車を降りると、その警備員に再び警察手帳を提示して、玄関を入っていった。
「デカイビルですね」と係長が言葉を漏らすと、
「ああ、何しろ日本有数のリゾート開発会社だからね」奥田管理官も呟いた。そして一階の右手にある案内コーナーに歩みを進めた。そこには若い二人の女性が座っていた。管理官と係長は警察手帳を同時に示し、用件を伝えた。
「すみません。この会社の経理担当の専務か課長さんにお会いしたいのですが、ご都合を聞いていただけないでしょうか?」と管理官が聞くと、
「ハイ、解りました。秘書の方に尋ねてみます」と年上の女性の方が言った。しばらく彼女は内線電話で話していたが、
「あの、専務は現在社内の会議に出席していますので、経理課長がお会いになるそうです。そこのエレベーターで十七階まで御上がりください。秘書がその際ご案内を致しますので」
「そうですか、解りました。十七階でしたね」と管理官は、再度確認した。
「ハイ、さようでございます」と答えたので、エレベーターで上がっていった。
十七階に着くと、扉が開き、そこに秘書らしき女性がたっていた。
「警視庁の刑事さんでしょうか? そうでしたら私は専務の秘書をしているものですが、説明は聞かれたと思いますが、先ず経理課長が会うそうですから、どうぞ此方にいらしてください」と言うので、彼女の後について行った。廊下の門部屋に立つと、彼女は、
「どうぞ、此方にてお待ちいただけますか?」と言って、応接間と書かれた部屋に入り、ソファーを勧められた。そこで二人は、そのソファーに座って待つことにした。暫くすると、その秘書がお茶をいれて、持って入ってきた。二人は、軽く"どうも"と言うと頭を下げた。そこに一人の男が入ってきた。いかにも一流会社の幹部と見受けられる風貌で、黒淵メガネをかけ、しつらえのよいスーツに身を包み、鋭い眼光を持った五十代の痩躯の男であった。二人の目の前に立つと、自己紹介を始めた。
「初めまして、私がこの会社の経理課長で
「恐れ入ります、私が警視庁捜査一課の管理官で、奥田と申します」
「そして私は、同じく係長の平滝と申します」二人それぞれに、金沢課長に名刺を手渡した。その名刺を目にした課長は、
「これは、これは、わざわざ警視殿と警部殿が二人で足を運んでいただきまして、如何なご用でございましょうか?」と、
「もう、ご存じでしょうが、お宅の会社の佐伯経理部長が昨夜殺害されました」
「ああ、ハイ、早朝のテレビのニュースで見ました。吃驚しました」
「勿論その事で、お宅の会社に事情を伺いたくて参りました」
「事情と申しますと?」管理官が口火を切った。
「当然、佐伯部長の日頃の環境についてです。誰かに恨まれてはいなかったか、何かの問題を抱えていなかったか何かトラブルに巻き込まれていなかったかです」
「佐伯部長がですか。誰かに恨まれてはいなかったかと申されても、プライベートなことは解りませんが、仕事上は恨まれるなどと言うことは有りませんでしたね。むしろ部下には評判のよいお方でしたがね」
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